一方で、自宅でのテレワークしかできず、勤務場所が職場から自宅に変わっただけで自由度そのものに変化がなかった人が増えたとも考えられます。さらには、一部の業職種では休業や時短勤務を要請されたことで、勤務時間の自由度が下がったと感じる人も増えた可能性が高いです。
新型コロナウイルス感染症の影響で、個人が感じる勤務時間や勤務場所の自由度にはばらつきがあったために、IndicatorIII-4「勤務時間や場所の自由度が高い」はわずかな上昇にとどまったと考えられます。
業務量は減るも根本的な解決と言えず
見えてきた課題にどう対処するか
IndicatorV-1「仕事量や負荷が適切である」が2020年に大きく上昇(62.4pt、同+2.6pt)した背景を見ていきましょう。この背景には、新型コロナウイルス感染症の影響で、一部の業職種において業務量が減少したことがあると考えられます。
実際に週労働時間別と業種別に、業務負荷を感じている人の割合を見ても、労働時間の多寡にかかわらず業務負荷は低減し、業種別でも軒並み低下している様子がうかがえました。2020年は、予期せぬ環境変化によって、全体の業務量が単純に減り、それによって業務負荷の大幅な低下につながった可能性が高いです。つまり、本質的な業務量の改善が行われた可能性は低いと考えられます。
働き方改革の促進によって、労働時間の縮減や休暇の拡充などワークライフバランスの高まりといった働き方の進化は確かに起こりました。しかし、労働時間の管理強化によって感じる窮屈さや業務量の未調整など、新たな課題も見え始めています。
今後は、働き方改革を進める中で、勤務時間の自由度を高め、適切な業務負荷を実現するための取り組みが必要です。現在ある業務の棚卸しや無駄な業務の見直しを進めることに加え、個人の生産性を高める学習の促進や、業務におけるICTツールの活用といったDXの推進も重要となってきます。
次回は、社会人の「学び」に着目し、2016年から2020年までの変遷と今後の課題を紹介していきます。
(リクルートワークス研究所 研究員/アナリスト 孫 亜文)