金融教育で生徒に教えるべき内容を
家庭科の教師は理解できているか

 大きな不安の2点目は、高校の教師、特に家庭科の教師本人が、本来ならば生徒に教えるべき内容を自分で理解できていないのではないかということだ。

 生徒が将来、現実的に無駄な損をしないで「生きる力」を持つためには、以下のような疑問に対して教師は明快な答えを持っていなければならないが、家庭科の先生はどう説明するつもりなのだろうか。

(1)将来の利益予想と株価の関係を教えてください。株価ってどう決まるのですか?

(2)株式投資とFX(外国為替証拠金取引)にはどのような違いがあって、老後の資産形成のためにはどちらが有利なのですか?

 両方とも、金融について興味を持っていて少し賢い高校生なら聞きそうな質問だが、明快な答えがある。(1)については、数学の教師なら説明すれば分かってくれるだろうし、(2)については政治経済の教師なら説明すれば理解できるだろう。

 しかし、両方について一人の家庭科の先生に短時間で納得してもらうのはなかなか大変そうだ。家庭科の先生が、生徒に対して適切な説明ができる様子は想像しにくい。

 しかし、数学と政治経済の授業でなら、普通の能力を持つ教師が丁寧に教えたら生徒は普通に分かるはずだ。

「金融的な判断ができる力」を家庭の運営スキルの一部だとして家庭科に押し込めてしまった文部科学省の判断が何とも残念だ。