そもそも金融教育に「家庭科」が適当か
2つの大きな不安がある

 どうやら、審議会の答申や学習指導要領は、生徒たちの将来の「生きる力」を養うための一環として、金融教育を位置づけているようだ。人生をうまくやるためのスキルセットを「生きる力」とまとめる言語センスは何となく気持ちが悪いが、反対はしない。高校生あたりまでを含む「子ども」にとって、金融教育は明らかに必要だ。

 だが、高校の家庭科で金銭計画の作り方や資産形成のための投資について教えられるのだとすると、大きく言って2点、大きな不安がある。

 1点目は、「生きる力」の中の重要な具体的構成要素であるお金の扱い方を、「家庭科」という科目の中の家計管理の話に押し込めることが適当なのかという点だ。

 高校の各教科の内容は、数学にせよ英語にせよ、いずれも生徒の将来の「生きる力」を養成するためにあるはずだ。

 率直に言って、金融教育は家庭科の範疇に収めて生徒に教えることに無理がある。

 金融的な意思決定にあって重要なことは二つあり、一つ目は正確に損得の判断をすることであり、そのための基礎は昔なら算盤、今なら数学だ。もう一つは、金融ビジネスや金融商品の仕組みであり、それを理解した上で個人や家計がどうしたらいいかを理解することだ。

 適切な金融教育の一部は数学の応用問題の中で取り上げられるべきだろう。例えば、大学入試に金融商品を比較する損得計算の問題が出るようになれば、将来、問題に出たような「損な金融商品」を選ぶ大人は激減するだろう。

 もう一つ大事なのは、「金融ビジネスとはこのような構造になっていて、顧客からこのようにもうけている」という仕組みを理解させることだ。これは、政治経済のような社会科系の中で、世の中の仕組みとして教えることがしっくりくる。