(1)お金の意味

 はじめに、「お金とは何か」について、自由に作文を書かせる。「お金に価値があるのはなぜか?」「お金はどのくらい大切か?」「お金があると幸せになれるか?」「お金に欠点はあるか?」などの質問について考えさせた後に、「お金の意味」について、自由に書かせる。

 この作文は保存して、全ての過程を終えた後にもう一度読み直させて、感想を語らせるといいだろう。

(2)貯蓄の必要性

 まず、以下の問題を解かせる。

【問題】「ある人の将来の所得を年収Y円としたときに、働いて稼ぐ年数(a年)と老後の年数(b年)を仮定し、老後の生活費の現役時代の生活費に対する比率を(x%)として、この人は現役時代にいくら貯めなければならないかを計算する式を求めよ」

 分数の代数計算なので、高校1年生なら余裕でできるはずだ。できない生徒は算数段階で落ちこぼれている可能性がある。それこそ、将来の「生きる力」に問題がある。数学教師と共にこの段階で丁寧に対処することが必要だ。

 現実生活で必要な計算のためには、資産額や年金の見込額などもう少し数字が必要だが、問題のエッセンスは、この程度の計算で分かる。金銭教育としては、所得や支出によって必要な貯蓄の額や、将来持っているべき資産額などが異なることを教え、「自分の数字で、自分の貯蓄計画を考える」必要性と方法を教えるといい。

 クラスの議論としては、19年に話題になった「老後2000万円問題」について議論してもいいのではないか。「仮に年金の収入が年間に180万円あるとして、老後の資金が2000万円で足りる人って、現役時代の収入はいくらくらいだと思う?」などといった問題を考えさせてもいい。

「2000万円も必要ない人」も「2000万円では全く足りない人」もいることを理解させ、「平均値で語ること」の危険を理解させられたら大変いい。

 ついでに、必要な貯蓄を行うための家計管理と節約の方法について補足してもいい。これは、家庭科の先生の得意とするところだろう。