田中:「いつまでにあれしてくれませんか」「これお願いしたいです」「あれをいただけませんか」。

そういう仕事の依頼も、指示も、命令も、聞き届けられなかったり、拒絶されたり、嫌がられたり、言った通りにやってくれなかったり、いくらでもあるじゃないですか。傷つかないことのほうが少なくないですか。

──そう言われたら、そうですね。わたしも。

田中:言葉を発するってそういうものだと思うんです。ネットだって、たとえばツイッターでも知らない人が有名な人に突然話しかけたりする場面を頻繁に見かけます。

──よくありますね。

田中:だいたい無視されるわけですが、はなから相手にされないとわかっていても、実際に無視されたら少なからず傷つくはずです。たまに、無視されても、のべつまくなし縦横無尽にめちゃくちゃ色んな人にガンガン話しかけてるアカウントとかありますけど、どんだけ鋼のハートやと思いますね。そういうアカウントはだいたい匿名ですけど。

──ということは、田中さんって、繊細なタイプなのでしょうか?

田中:めちゃくちゃ傷つきやすいですよ。小鹿のバンビです。何か言われたらすぐ気に病むし、自分がしゃべったらほぼ損するし、相手に頼みこむようなことばっかり言わなきゃいけないし、自分が図太くしゃべってることなんて全然ないです。

──田中さんは公認マーク付きの筋金入りのツイッターユーザーですから、嫌な思いをすることは多々あるのでしょうね。

田中:ああ、あの青い鳥のマークがついたSNSのことですね? 最近始めたばかりなのでまだよくわからないのですが、がんばっています。

田中:傷つくことはたくさんあります。いわゆるクソリプが飛んできたときに。でも、まともに取り合っていたら自分もドツボにハマっていくし、ぐっとこらえて心のかさぶたを作るしかない。話をしたって傷つくだけなんですから。

──「会話をすると必ず傷つく」とも根底でつながっているような気がするんですが、『読みたいことを、書けばいい。』『会って、話すこと。』も言葉の数がものすごく少ないですよね。

田中:ええ。

今野:「1ページあたりの文字数がこんなに少ない本は初めて見た」というご感想を多数いただいてます。

田中:ユニバーサル・デザインを意識しています。

──でも、こうしてお話を伺っていると、田中さんの中にはもっといろんな思いや考えが溢れているのに、そのほんの一部だけが言葉になっている印象を受けます。

田中:おっしゃる通りです。そもそも、言葉ってめちゃくちゃ不完全なものじゃないですか。