A課長は法律的には管理職といえないのでは?

<A課長は法律的に管理職といえるのか?>
 ○総務部の権限は総務部長にあり、自分は部内の意思決定にはほとんど関わっていない。
 ○労働時間については、部下と同じ管理方法であり自己裁量権がない。
 ○雑務等、部下がその労働時間内でできない業務を代わりに行っていた。
 ○課長としての役職手当が支給されているが、月3万円であり業務に対して相応額とはいえない。残業代が支給されないことにより、同年代の非管理職の方が賃金単価が高い。

 B社長は、説明を聞いて驚いた。

「A課長は会社内では管理職扱いでも、法律的には管理職とは認められず、残業代の支給が必要なんですね?」
「その可能性は高いです」
「それでは総務課長の業務見直しを進めて残業を減らします。その上でどうすればC君を説得して総務課長にすることができますか?」

 E社労士は次のようにアドバイスをした。

「一例ですが、Cさんを課長、Dさんを課長代理にして、総務課長の職務や責任を分担してみるのはどうでしょう」

 B社長とA課長はその後、E社労士のアドバイスを参考にして早速総務課長の職務見直しを行った。総務部で新たにクラウドシステムを導入し、課員の雑務時間を大幅に減らし、部下の指導・育成や会議や打ち合わせへの出席は課長と課長代理が分担して行うなどの計画を立て、その結果1日当たり1時間以内の残業で済む目星がついた。そして改めてCを総務課長、Dを総務課長代理とする内示を出し、2人とも承諾した。

Cは総務課長、Dは課長代理に昇進。
A課長は晴れて総務部長に昇進したが……

 そして年が明け、A課長は晴れて総務部長に昇進したが、B社長の命令でクラウドシステムの統括管理者になったため、歴代の総務部長より職務が大幅に増えてしまった。慣れないシステム管理に四苦八苦し、そのせいで当面は連日夜の10時まで会社に残ることになりそうだ。

「総務部長はヒマなはずだったのに、これじゃ話が違うじゃないか。トホホ……」と嘆きながら、今日もパソコンと格闘するA部長であった。