E社労士が口を挟んだ。

「Cさんが総務課長になりたくない理由は、きっとA課長の普段の仕事ぶりを見ていて、自分にはとても務まらないと思ったのではないでしょうか?まずはA課長の業務について見直しを図る必要がありますね。本来の業務以外に、無駄な会議への出席とか雑務が多くないですか?」

 A課長は頭の中で自分の業務をひとつひとつ確認しながら答えた。

「そうですねえ……確かに毎日最低1つの会議や打ち合わせに参加していますし、ここ2年間は社内全体で長時間労働を抑制していたので、書類の整理などの雑務は私が引き受けることが増えました」
「そうそう、管理職は残業代を支払わなくて済むからね」

 B社長の言葉に、E社労士は首を横に振った。

「今のA課長の立場が、労働基準法でいう管理監督者なのか確認が必要ですよ」
「えっ、どういうことですか?」

<労働基準法上の管理監督者の要件>
 ○出勤および退勤時間の制限がないなど、労働時間や業務量を自己裁量で調整できること。
 ○地位にふさわしい賃金面などの待遇がなされていること。
 ○自分が管轄する部署内において、職務内容や責任、権限が経営者と一体の立場にあること。

<上記で管理職として認められた場合の処遇>
 ○時間外、休日労働に対して残業代や休日出勤手当の支払いが発生しない。
 (ただし深夜労働に対する割増賃金の支払いは必要)
 ○労働時間や残業時間に上限を設けなくてもよい。(ただし労働時間の把握は必要)
 ○8時間以上労働した場合でも休憩時間を設ける必要がない。
 ○法定休日の適用から除外される。