中国の個人消費の落ち込みは
日本の自動車業界に大きな逆風

 四重苦を背景に、GDP成長率予想を下方修正する中国経済の専門家が増えている。秋口頃まで前年同期比4%台前半と予想された10~12月期の実質成長率は、ここにきて3%台前半に低下した。22年の成長率予想も引き下げられ、一部では5%を切る可能性を指摘する専門家もいる。

 当面、中国の不動産市況はかなり不安定に推移するだろう。中国では「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンが増えている。不動産投機熱が高まったことによって、居住のための需要以上にマンションが建設されたからだ。

 共産党政権は必要に応じて中央銀行による流動性供給を実施しつつ、不動産企業に資産を売却させて不動産バブルの軟着陸を目指しているが、買い手の付かないゴーストタウンなどの資金化は難航するだろう。デフォルトや経営破綻に陥る企業は増える可能性が高い。

 不動産市況が悪化する中で、共産党政権が政治基盤安定のために規制などを強化すれば、資金が海外に流出して不動産以外の業種でもデフォルトが増え、理財商品の価値は毀損(きそん)されるだろう。

 中国の電力市場もかなり不安定に推移するだろう。電力の需要面に関して、暖房のためにより多くの電力が必要な時期を迎える。一方で供給面では、中国や東南アジア地域での感染再拡大を背景に供給制約は長期化し、石炭調達の遅れとコストの増加が懸念される。脱炭素も石炭火力発電を制約する。中国国内での感染再拡大は個人消費の回復を遅らせるだろう。

 中国経済が減速する可能性は高まっており、先行きは楽観できない。それは、わが国経済にとって大きなマイナスだ。中国の個人消費の落ち込みは日本経済を支える自動車業界に大きな逆風となる。4~9月期の業績が堅調だった電子部品メーカーからは、中国需要の伸び鈍化を警戒する文言が出始めた。世界経済が15年夏に起きた「チャイナショック」のような状況を迎える可能性も否定できない。