共産党政権は3回目の
“パラダイムシフト”を迎えた

 中国の政治も経済を圧迫している。22年秋の党大会が近づく中、習政権は経済環境の安定を急いでいるようだ。同氏は国全体で豊かになる考えを世論に示し、求心力を維持強化したい。その考えが不動産企業への規制やIT先端企業への締め付け強化につながった。

 別の見方をすれば、中国は国家運営の大きな変革期を迎えつつある。中国政治の専門家の一人は、「共産党政権は3回目の“パラダイムシフト”を迎えた」と指摘していた。

 一つ目の変革期は1966~76年の「文化大革命」の時代だ。当時、毛沢東は政治面での失地回復を目指して言論を弾圧し、自らの思想を国全体に徹底的に浸透させた。その結果、経済は疲弊した。

 二つ目の変革が78年に始まった「改革開放」だ。文化大革命後、政治基盤の安定を手に入れた鄧小平は、経済成長をより重視した。重厚長大分野では経済特区が設けられて外資からの技術移転が進み、国営・国有企業が成長した。IT関連を中心に民間企業の設立も認められた。民間企業はその後30数年間の中国経済の成長を支えた。

 現在、中国は3回目の変革期を迎えたといえる。習氏は改革開放によって拡大した貧富の格差を是正するために、民間企業の創業経営者への締め付けを強めている。不動産業界では主要先進国が行うような公的資金の注入など本格的な救済とは異なり、主に各社が資産を切り売りして債務削減が進む。

 それによって、共産党のテクノクラート(技術官僚)は経済の安定を実現し、その上で半導体やAIなどの先端分野に生産要素を再配分し、新しい需要を創出しようとしていると考えられる。

 新しい需要創出を目指すことは、経済成長に不可欠だ。ただし、共産党政権の考えが常に正しいとは限らない。特に、IT先端企業への締め付けは中国経済の成長を支えた民間企業のアニマルスピリットを減殺するだろう。中国では経済が政治に圧迫される様相が強くなっている。