山岸悦子(やまぎし・えつこ)
立教女学院中学校・高等学校教頭
立教大学理学部物理学科卒。学習院大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了(化学専攻)。専門は地球化学。学習院大学助手を経て、立教女学院中学校・高等学校で理科教員となる。共著書に『化学の小事典』『原子力災害からいのちを守る科学』(いずれも岩波ジュニア新書)など。
立ち上がった新しい教育のための施設
――こちらが以前からお話のあった新しい教室ですね。
山岸 40年ほど前に建てられたマーガレットホールの放送室と旧AV教室のあった3階を改修し、この11月から利用が始まったばかりです。Wi-Fi環境を整え、スクリーンを3方向に5面配置しました。椅子のみですと1学年相当の200人が収容可能で、講演会や映画・動画鑑賞も行える多目的スペースです。
対話型・実験型の授業展開が可能ですから、小グループに分かれてのアクティブラーニングも行うことができます。海外の姉妹校などとのオンラインでの討論も可能となります。
――この施設は何と呼んでいるのですか。
山岸 「マルチメディアルーム」です。国際交流や国際貢献に携わる生徒のグループSMIS(St. Margaret’s International Society)がさっそく模擬国連演習で使用したのが、先ほどご覧いただいた風景です。テーマは「SDGs弁当」で、各国の大使がSDGsと異文化理解を促進するようなお弁当を提案して討議するというものです。
――全部英語でスピーチされているのですね。ところで、本校でも短大を廃止しましたが、残された施設の利用についてはどのように考えていますか。
山岸 立教女学院短期大学は2018年に募集停止しました。短大の図書館を、資料室も併設した3階建ての中高のラーニングセンターとして、22年4月より供用開始できるよう現在工事を進めています。ここでは、生徒が自主的に学習し、ディスカッションやプレゼンを行うことができますし、論文作成などにも利用可能です。
――創立から来年(22年)で145周年を迎えますね。
山岸 母娘、姉妹、中には3世代にわたって通われているご家庭もあるようです。
――OGでもあるお母さんが、「いまでは難しくて、うちの娘も通わせたいけど入れません」とぼやいていました(笑)。リュックを背負った生徒が目立ちますね。
山岸 自然災害やコロナのことを考えると、両手が空いているメリットを考え、今年からリュックを許可しました。学校指定のものは作らず自由ですが、「学習にふさわしいもの」を生徒自らが選んでいます。本校は創立以来、制服は定めておらず、自由服ですが、それも生徒は節度を持って自分で選んでいます。
――生徒さんがにぎやかに各教室を回っていました。
山岸 改修工事中は約半年間、旧短大の校舎に移転していて、本日が高校生に改修したばかりの校舎を見学してもらう初めての日なので。生徒が一番喜んでいるのが大きく変わったトイレでした。中にベンチもあって、安らげるスペースにもなりました。
築90年の戦前からの校舎は、建築的にも美しく、長く愛されてきましたし、生徒の感性を豊かに育ててきました。建て替えるのではなく、大規模修繕を行う決断をし、これまで取り組んできました。外壁や中廊下の壁は洗浄して補修することで建設当時の色合いを取り戻し、全体的に明るくなりました。
以前は寒暖差が大きな校舎でした。見た目には分かりませんが、土の上に立っていた1階では、床下に断熱材を新たに入れてあります。隙間風の入っていた窓も機密性を高め、高い天井には温度調節のためのファンが付きました。
――あとでご案内いただく礼拝堂や講堂も一緒に取り組まれたわけですね。