格差是正のため、避けて通れない固定資産税導入

 長期的な影響さえも懸念される固定資産税の導入に政府が踏み切るのは、習近平指導部が固定資産税を「共同富裕の実現に欠かせないもの」だと捉えているからだ。

 中国共産党の媒体「求是」(10月15日)で発表した「共同富裕の着実な取り組み」からは、不公平な分配を排除するため、不動産に関する税法や改革を推進し、高所得者や企業が蓄えた富を社会に還元させようという固い決意が垣間見える。

 ここに来て始まった固定資産税導入の動きに、WeChat(中国のメッセンジャーアプリ)では、「ついに保有にまで手を出した」「財政はよほど逼迫(ひっぱく)しているのだろう」「将来的な不動産の取引需要の減少を見越した対策だ」などのツイートが飛び交っていた。

 しかし、焦点となるのはむしろ「持てる層」と「持たざる層」の格差緩和である。過去20年間、中国は不動産という富の偏在が社会格差を拡大させてきたが、これを是正するには、もはや固定資産税の導入は避けて通れないという認識に達したことがうかがえる。

 固定資産税を徴収すれば、不動産の保有コストを増加させ、結果として投機需要を減らすことにつながる。また富裕層が余剰不動産を売却して市場の供給を増加させれば、高騰し続けた住宅価格を下落させることにもつながるという期待がある。中国の不動産の専門家の間でも、固定資産税を導入すれば富の再分配を促すという論調が強い。