ついに抜いた伝家の宝刀

 中国では、高騰する住宅価格の記録が更新されるたびに、住宅ローンを組むための頭金の割合や金利の調整など「小手先」での価格抑制策を繰り返してきた。しかし、今回ついに習指導部は “禁断の固定資産税”に目を向けた。これに対し、都内私大で教壇に立つ中国出身の教授は「本気で取り組めば“世直し”にもなる。外地出身の都市部在住者にとって、適正価格でのマイホーム取得の夢が、いよいよ現実味を帯びてくるだろう」と前向きに捉える。

 今回の固定資産税は、真っ先に沿海部の都市で実施されるといわれているが、この影響がじわじわと出てきている。

 中国人留学生で広東省出身の趙志龍さん(仮名)は、「父親は最近、手持ちの事業用住宅3戸を売りに出した」と明かす。早晩、固定資産税が導入されるだろうという見込みから売却に踏み切ったのだが、なかなか購入希望者は現れないという。

 習指導部の狙い通り、固定資産税は「持てる層をターゲットに、営利的な不動産を放出させる」ことには一定の成果を出すかもしれない。しかし、その先の再分配につながるのか否かは不透明で、むしろ中国の住宅市場が膨大な在庫物件を抱えて停滞する危険性すらはらんでいる。

「格差是正の大改革」は、なかなか一筋縄ではいきそうもない。