文大統領は在任中に戦時作戦統制権の返還を実現しようと米国に働きかけてきた。現実問題として任期中というのは時間的に厳しくなってきたが、目標を取り下げたわけではないだろう。

 文大統領は北朝鮮との終戦を宣言しようと画策しており、米国には相談もせず一方的に提案した。だが、米国は終戦宣言がもたらすインパクトを見極めようと慎重に検討しており、今のところ文大統領の希望に沿う様子はない。文大統領が最終的に期待しているのは、終戦宣言を契機とする金正恩委員長との首脳会談であり、関係改善である。

 来年の韓国大統領選挙で、革新系与党「共に民主党」の次期大統領候補である李在明(イ・ジェミョン)氏が大統領となれば、軍事力の強化は日本の極右(自民党政権を右翼政権とみているのではないか)に対抗するための軍備拡大という意味合いが強くなるであろう。

 いずれにせよ、韓国の革新系による国防力強化の最大の意図は、韓国の自主性を高め、在韓米軍に頼らない国防力を磨くことで、北朝鮮との関係改善をより強力に進めることにあるのではないかと疑われる。

韓国の国防予算は
すでに日本を超えている

 韓国政府が発表した2022年の政府予算案では国防費は前年比4.5%増の55兆2277億ウォン(約5兆3000億円)となり、日本の21年度防衛予算と並んだ。日本政府は、物価などを考慮した購買力平価で換算すると、日韓の防衛予算は18年の時点で逆転していたとみている。

 韓国政府は国防中期計画では年平均6%を超える増額を予定しており、23年には実額で日本を上回る可能性がある。