東芝が経産省と一体で株主に圧力をかけたとされる問題を総括する報告書を公表した。同時に発表した会社3分割で成長へと再出発しようとしたが――。総括も成長戦略も具体性に欠ける内容だった。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
株主圧力問題からは“決別”を宣言したが
経営が混乱していた東芝は11月12日、再スタートに向けて重大な二つの発表を行った。
一つは、東芝が経済産業省と組んで物言う株主(アクティビスト)に圧力をかけて、2020年の定時株主総会での議決権行使を制限しようとしたとされる問題(以下、圧力問題)を“正式”に総括する報告書だ。以前に公表された報告書が客観性に欠けていたため、第三者を入れた組織による“再総括”が必要だった。
圧力問題を巡っては6月に、「株主総会が公正に運営されたものとはいえない」とする調査結果が発表されているものの、この調査を行ったのは圧力を受けた当事者であるアクティビストが選定した弁護士だった。
今回発表された調査報告書は東芝が第三者を参画させたガバナンス強化委員会(委員長=金築誠志元最高裁判所判事)によるもので、圧力問題の真因を追求し再発防止策につなげるのが目的だった。
結局、委員会の結論は前回調査とさほど変わらなかった。金築氏は「(圧力問題における執行役2人の)一連の行為は違法ではないが、市場が求める企業倫理に反する行為と評価せざるを得ない」と結論付けたのだ。
綱川智社長は会見で「経営者として大変恥ずべきことと思っている」と反省の弁を述べた。これにより東芝は問題行為を正式に認めたことになり、議論が蒸し返されることはなくなった。
問題行為の首謀者だった車谷暢昭前社長、実動部隊とされた豊原正恭前副社長と加茂正治前上席常務はすでに東芝を去っている。綱川社長は3人の「責任」を確定させて、圧力問題からの決別を宣言したのだ。
ところが、である。同委員会は重要なポイントをあえて避けて報告書をまとめた節がある。