日本の相続税はなぜ高い?
その理由と背景を徹底検証!

 日本の課税方式に基づく現行相続税は、第2次大戦後の1949年に米国の経済学者・シャウプ教授による報告書、いわゆる「シャウプ勧告」に従い1958年に導入された。恒久的な租税制度の確立を目的とし、相続税は実質的財産税(税源が財産自体にあるもの)とすることを主眼としている。

 シャウプ税制は公平な税体系を一貫して目指し、税制の根幹に所得税を据え、基礎控除額を引き上げて負担軽減を図った。その減収分は富裕税として高額所得者への課税で補うものとした。しかし、戦後復興期である当時の日本の実情に合わず、執行が困難な富裕税は1953年に廃止された。

 現在、日本では、所得税、相続税、贈与税に「超過累進課税」が用いられている。課税標準が一定額を超えると、超過金額に対し、高い税率が適用される。これは「税の再分配」の仕組みに基づく。すなわち、所得や資産の多い人からより多くの税を徴収し、社会保障給付等として再分配して、持たざる人も平等に暮らせるようにする考え方だ。

 OECDに言わせれば、「相続税、遺産税、贈与税は、不平等対策と公財政の改善により強力な役割を果たすことができる」そうだ。特にコロナ禍で財源の圧縮に悩む国の政府は、不平等対策の重要な手段として、相続税や遺産税にもっと注目し、制度設計を見直すべきだと提言している。

 税収のうち相続税の占める割合が多い国順は、韓国、ベルギー、フランス、日本、フィンランド……となっている。しかし、トップの韓国でさえ1.59%。日本は1.33%。OECDは、コロナ禍で国の財源確保が苦しい時にこそ、相続税を収入源としてもっと重視してはどうかというのである。

 何をもって財産とするかは、国によって価値観が異なる。財産を得る方法も異なるし、相続ともなれば文化や宗教観も関わってくる。相続税に関して、そうそう世界各国共通の基準ができるとも思えない。しかし、資産形成の手段が一層デジタル化・国際化すれば共通基準も必要となるだろう。

 令和3年度税制改正大綱の前文に「相続税と贈与税の一体化」について記され、波紋を呼んでいる。「今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する」との文言もあり、海外とどのように足並みをそろえていくのかも注目したいところだ。

※相続税と贈与税の一体化については、『富裕層の節税対策を封じ込める!?「相続税と贈与税の一体化」』参照。