過労や労災、メンタル疾患など、会社や業務が直接の原因ではない、私傷病である「がん」。予防や治療などは本人の問題で、会社は関係ないし踏み込むべきではない、と思っていないだろうか。しかし、対応を間違えると管理職や会社にとって大きなリスクにもなる。実は、がんに罹患した社員を放置せず、仕事との両立を支援すべき取り組みを今すぐ始めた方がいい理由がある。特集『部下と自分のために! 最新版 部長と課長のがん対策』(全6回)の#1では、なぜ今企業が、そして部・課長が「がん対策」を真剣に考えるべきなのかを、最新の事例と共に示していく。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
誰にとっても実は身近な「がん」
働き盛りの部・課長世代も当事者に
別の世界の話だった「がん」という存在が、突然自分のことになりどっと押し寄せてくる。そんな体験を自分も予期せずしてすることになった。
2020年11月、医師に希少がんの一種である神経内分泌腫瘍と告げられた。
幸いに、すぐに大学病院で手術を受け、数カ月の休職を挟んで元の仕事に復職することができた。再発に若干の不安を抱えつつも仕事を続けている。
実はがんは働き盛りの部・課長世代のサラリーマンに身近な存在だ。男性は生涯で3人に2人が、女性は3人に1人ががんにかかるが、女性は30代以降、そして男性は40代以降の、ちょうど管理職になる世代でぐっとがんの罹患率が上がるからだ。
一方で、医療の進歩によりがんは不治の病ではなくなってきた。
国立がん研究センターが、がん診療連携病院での院内のがん登録を集計した調査によると、全部位のがんの5年相対生存率(がん以外の死因による死亡などの影響を取り除いた患者集団の実測生存率を、患者集団と同じ性・年齢構成の一般集団における生存率で割って算出する)は11~13年の症例で68.9%。そして10年相対生存率は、05~08年の症例で58.9%。5年、10年共に前回調査から上昇し、調査開始以来の最高値を記録した。
さらに進行がんでも治療を続けながら社会人生活を送るケースも増えており、「がんになったら全て終わり」ではなくなったのだ。
ところが、ことに「がんと仕事」「がんと会社」の関係については、いまださまざまな問題が残っている。
その問題への対応を上司や経営陣が間違えたり、会社が当事者として解決に取り組まなければ大きなリスクを生むこととなる。なぜか。次ページから詳しく解説していこう。