働き盛りのサラリーマンは、がんとどのように戦ったのか。航空会社で営業マンとして働いていた渡部俊さんを襲ったがん。10年で7回の手術を繰り返し、それでも昇進・昇格しながら仕事を継続。経験を生かして、がん治療と仕事を両立させる制度作りにも参画している。特集『部下と自分のために! 最新版 部長と課長のがん対策』(全6回)の#4では、治療と仕事を両立させた渡部さんを支えた「思い」を聞いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
働き盛りで新婚の航空会社営業マンは
突然襲ってきたがんにどう対応したか
「なんかありますねえ。ここの場で言っちゃいけないかもしれないけど、渡部さん、これはがんかもしれないねえ」
2012年。出勤中に激しい腹痛に襲われ病院に駆け込み、腸閉塞で緊急入院となった渡部俊に、内視鏡検査の画像を見ながら医師が掛けた言葉は、ドラマでよく見るような重苦しい深刻なものではなく、拍子抜けするようなものだった。
航空・測量事業を経営する朝日航洋で営業マンとして忙しい毎日を送っていた渡部。前年に結婚したばかりでもあった。その後、妻と共に医師から話を聞いたときも「がんだって」「どうしようか」と実感は湧いてこなかった。
駆け込んだ病院から転院して6月に手術。手術後の病理検査を踏まえたインフォームドコンセントでは、ステージ3bの大腸がんと言われた。最終的な告知を受けた後、会社に報告。上司や担当役員から「治療に専念してこい」という言葉をもらい、それから抗がん剤治療が始まった。
手術を経ても薄かったがんの実感。それを「これはえらい病気になってしまった」と初めて認識したのが、この抗がん剤治療だった。渡部は手術7回という過酷な治療をどう乗り越え、そして仕事と両立させてきたのか。次ページで見ていこう。