巻き起こった怒りの声に、慌てた同団地の担当責任者は声明を発表した。

「現場の作業員は当該ネットユーザーと十分にコミュニケーションを取らないまま、ペットの犬に無害化処置を行った。目下、本所は当該関係者に批判を行い、担当部署を異動させ、当事者に対して誠意ある謝罪をするよう命じ、すでに当該ネットユーザーの了解を取り付けた。同時に当事者もまた感染期における感染防止措置に理解を示した」

 ペットを無断で殺傷処分にしておきながら、「無害化処置」とは? 「当該ネットユーザー」は怒りの声を上げているのに「了解を取り付けた」だって? これが相変わらずの当事者不在の「お上の弁解」であることは一目瞭然だった。

 その後、コーギー犬の飼い主は「勤務先を通じて、これ以上騒ぎ立てるならクビにすると脅された」と言い、また飼い主の書き込みを転送していたユーザーも「書き込みを削除しろと電話がかかってきた。わたしの本名を読み上げ、自分のことを『一介の市民』とだけ名乗る、気持ちの悪い電話だった」と書き込んでおり、「進展が特になければ、今後書き込みはしない」と沈黙してしまった。

 こうした事例が紹介されるたびに、人々は身の回りの権利が緊急事態を理由に削り取られていることを実感している。まき散らされているのはウイルスだけではない。当局の粗雑で、非人間的な扱いに対する不信感もまた、膨れ上がっている。