企業や教育機関によるSDGsの「行動の10年」
SDGsのゴール4に限らず、NPOや各省庁の動きとともに、各企業のSDGsへの意識はかなり強まっているようだが……。
辰野 「SDGsって何?」という「SDGs研修」は少し落ち着いた感がありますが、SDGsを推進する企業の動きはどんどん増えています。2016年から2020年くらいまでは、言うなれば、SDGsの“プロモーション期”でした。そして、今年2021年からは「行動の10年」。2030年までのゴール達成を見据え、もはや、「SDGsとは何か?」の段階ではなく、各企業が細分化されたテーマに取り組んでいる傾向が見られます。
小学校から大学まで、教育機関がSDGsに取り組む熱量も上がっていると辰野さんは語る。
辰野 小・中・高校のそれぞれにおいて、SDGsについての授業は一般化されつつあります。私たちGiFTはJICA(独立行政法人 国際協力機構)さんと一緒に教員対象の研修を行っています。そこではSDGsにつながる「持続可能な社会の担い手」の育成のための授業や学校作りに積極的に挑戦されている先生方が多くいらっしゃいます。そこで、すでに授業を実践されている先生方がノウハウをシェアしたりもしています。また、SDGsの内容が入試問題に出てきたり、高校生や大学生が参加するSDGs関連のイベントも多くなっています。私はそうしたイベントで審査員をさせていただくこともありますが、学生さんの発表を聞いていると、SDGsへの理解度の深さがよく分かります。
TwitterをはじめとするSNSでも、若年層のSDGsについての発信は多く、さまざまな授業形態で「17のゴール」を学んでいる姿が垣間見られる。
辰野 環境問題などのニュースに幼少期から接している子たちを、私たちGiFTは「SDGsネイティブ」と呼んでいます。SDGsのゴールに対し、自分で何かの行動を起こせる人はそれほど多くないという全国紙の調査もありますが、若者たちのハードルは低いようです。実際、彼ら彼女たちと話していても、大人よりも、SDGsを自分事にしています。たとえば、企業のトップの方は、「なるほど、そういうことか……」とSDGs研修に向き合いますが、若い子たちは「当たり前ですよね」と。行動する・しないではなく、「やるしかない」といった感覚を持っていて、学校の授業におけるSDGsへの向き合い方も専門的になってきています。農業高校の生徒たちが環境に配慮したオーガニックの育て方を研究したり、居住地域にいる生き物との適切な共存を目指したり、商店街を活性化させるためにSDGs的な視点で何ができるかを考えたり……。企業同様、SDGsを知る時期を経て、「行動の10年」になっているように感じています。