「ストーリー・ベースド・ラーニング」という手法の実践

 Diversity Voyageでは、「地球志民」育成のために、「Story Based Learning(ストーリー・ベースド・ラーニング)」という手法を実践している。一人ひとりの人生経験をお互いに深く聞き入れ、その共感から、ともに創る未来を考えていくというものだ。

辰野 似た名称のProject Based Learning*3 は一般的に知られていますが、GiFTのStory Based Learningは「一人ひとりの人生から学んでいこう」というもので、「GiFT Curve」と呼ばれる「人生のアップダウン表」を本人が作り、それをもとに自らが語っていくワークです。個々の人生を語り合うことで、自分はいったい何者で、なぜ、いまここにいるのか、そうした自分がどんな未来を創っていきたいのかが見えてきます。まず、事前研修では、日本側の参加者同士が日本語で、本番の海外では、現地の若者とともに英語で行います。語りの後には、聞いた全員が感想を発し、悩みや苦労話などに「私もそうだった」「応援したい」といったメッセージを送ることで、当人が何でもないと思っていた自分の人生に価値を見つけることができます。話を聞き合うことで、人生がそれぞれに違うこと、そしてその中にも共通項があることなどに気づき、参加者同士が深い共感でつながっていきます。

*3 「問題解決型学習」「課題解決型学習」などと言われる勉強法のこと。生徒自身で何かの問題を見つけて、その問題を解決する能力を身に付けていく学習方法。

 振り返りたくない経験など、「自分の人生の物語」をあまり語りたがらない学生もいるのでは?

辰野 はい。ファシリテーションがとても難しいです。実は、そのファシリテーションをするために、ファシリテーター養成の研修プログラムをGiFTが持っているくらいです。誰かの人生をみんなの前で扱うことはとてもセンシティブなので、まずは、ファシリテーター自身が自分の人生をみんなに開示したりします。一緒に何かをやるときにはある程度の自己開示が必要で、格好つけの優等生のふりからは本当に価値のあるものは生まれません。素の自分になって、自分を表現することが重要です。ただ、「GiFT Curve」には、あまりにもつらくて話せないことは書かなくていいことにしています。目的は相手とつながるためで、つらさを分かち合うことではありません。できるだけの自己開示をしてくださいというスタンスです。他者の人生の中に自分と近い部分を見つけたり、知らないことに驚いたりして、唯一無二の人間同士としてお互いを尊重するようになるのです。