「答え」は与えず、引き出す

「聴く力」「質問する力」は、これからのリーダーに欠かせないスキルです。

 コーチの役割を担うリーダーは、メンバーに対して「答え」を提示しません。自身の経験則からわかっていたとしても決して結論を先に言わない。それは「答え」を提示しても、意味がないことを知っているからです。

 僕がこれまでに出会ったリーダーのなかにも、立場を利用した強制力で部下を動かそうとする人はいました。そういう人の下で、部下は一見従順な姿勢を示すのですが、実は、その場を切りぬけることしか考えていないものです。

「はい」と笑顔で返事をしていても、自分で考えていない「答え」を押し付けられているだけなので、どうしてそのように動くべきなのかを理解していないことが多いのです。あるいは、リーダーの命令通りに取り組みはするものの、その考えには納得できていなくて、手を抜くかもしれません。やらされ感のある仕事では、人は主体的に動かないものです。

「1カ月後までに売上を5%伸ばさなければならない。会社が決めた○○の施策を実行してくれ」と指示するのは、昔ながらのリーダー。

「1カ月後までに売上を5%伸ばさなければならない。なにか施策を考えておいてくれないか」と言うのは、普通のリーダー。

 僕が考えるこれからのリーダー、つまり対話型リーダーは、メンバーにこう問います。

「1カ月後までに売上を5%伸ばさなければならない。どんな施策が有効だろう?」

「○○さんが、過去半年間で行った、売上を伸ばすための施策や行動で、いちばん即効性のあったものは何?」

「チームの○○さんは、□□の施策が有効じゃないかと話していたけれど、キミはどう思う?」

 コーチの役割を担うリーダーが、メンバーに対して「答え」を提示しないのは、「“自分自身で気づいたこと”でなければ、人は動かない」という真理を知っているからです。

 話が脇道に逸れたように感じられたかもしれませんが、つまり、これはメンバーの強みを引き出す作業に等しいのです。それぞれが持つ強みを使って、自分自身の「答え」を導き出すことを促すのです。