バッテリー分野の勝算は「哲学のある資源戦略」にかかっている
株式会社経営共創基盤 IGPIグループ会長
ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年 産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、2007年に経営共創基盤(IGPI)を設立し代表取締役CEO就任。2020年10月よりIGPIグループ会長。 2020年日本共創プラットフォーム(JPiX)設立、代表取締役社長。パナソニック社外取締役。経済同友会政策審議会委員長。政府関連委員等多数務める。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。
楠見:バッテリー開発において、最後に残るのが資源の問題です。そこに手を打てるかどうかが、勝算の大きな要因になると思います。たとえば原油はさまざまな国から産出されているのに比べ、リチウムやコバルトの産出国は非常に限られている。いかに資源を確保するか、そこが最後の最後に効いてくるんです。
冨山:希少資源を多く使用する製品は採算が合わず、メジャーな材料になりにくいという特徴があります。そのため、バッテリーも比較的潤沢な資源を探しているんですよね。
楠見:中国では、LFPという鉄系の素材を使った電池が普及しています。LFPの場合、エネルギー密度が上がらず、車載用としては走行距離が伸びません。しかし今後は、車に使用するバッテリーも用途によってすみ分けが起こるのではないかと考えています。
豊島:資源の争奪戦が起こっている今、日本の課題や戦略はあるのでしょうか?
竹内:日本は、オイルショックの頃から石油や天然ガスといったエネルギーの資源調達戦略を立ててきました。今はそれだけでなく、希少資源をどう確保するかといった戦略も立てています。ただ、「これをやれば必ず資源を確保できる」という答えはないんですよ。調達先を分散したり長期契約したりするしかない。今だって、天然ガス価格が世界的に高騰していますが、日本への影響が少なく済んでいるのは長期契約しているからです。こういった戦略を地道に立てて実行していくしかないと思います。
冨山:政府の宿命として失敗すると怒られるけど、戦略がうまくいっても誰も褒めてくれないんですけどね(笑)。哲学やビジョンを持って、長期的な戦略を立てることが、資源の価格変動に振り回されないためにも大切なのではないでしょうか。
豊島:日本政府は、脱炭素に向けた効果的な予算の手当て、いわゆるワイズスペンディングができていると思いますか?
冨山:今はボトムアップ的なお金の使い方をしている印象で、全体の戦略性はないと感じます。ビジョンがないと優先順位がつけられず、必要な金額を足して均等に割り、ばらまくだけになってしまいます。分散投資をするにも、まずはビジョンが必要です。ただ、日本はまだ過去の負債に引きずられていて、未来にまでお金が回っていないと思います。