諦められない人は、悩んでいる時間がもったいないと考えるようだが、多くの場合、単にぐだぐだしているにとどまっている。悩むというのは真剣に考えることだ。そうすれば、目的を達成できないとしても、考えた時間は無駄ではない。

 夢についても同じだ。本気でその夢を実現したいのなら、どうしたら実現できるのか、考えた具体的な方法を箇条書きにしてみてほしい。現在の自分には不可能ならば、それを解消する方法を考える。夢の実現へ努力をする人と憧れを思い浮かべるだけの人の差は、実現しようとする気持ちの強さだ。それが行動を後押しする「力」になる。

「考える」も行動のうちだ。行動し続けることで、自分の立ち位置や視点が変わり、見えるものやできることが多くなっていく。本当に願っているのなら、考え尽くさずにはいられないはずだ。そして、自分で試さずにはいられなくなる。強く望んでいない人ほど、他人に「どうしたら良いでしょうか?」「良い方法はないでしょうか?」と、漠然とした質問をする。抑えきれない衝動を抱えている人は、すでに自分で試しているので、もっとポイントが絞られた質問をする。漠然とした質問をする人は、まだ諦める対象に焦点が合っておらず、諦めるほどのエネルギィや時間を投じていないのだ。

◇諦めて失敗しても次の成功につながる

 正真正銘の諦める体験ができるのは、目的に向かって努力し成果を積み上げた状況だ。著者はこれまで、時間と労力を注ぎ込んだ対象を諦めなければならないときがあった。そんなときは、大勢の犠牲を伴うとわかっている核ミサイルのボタンを押すかのような、大きな緊張を感じ、心臓がバクバクいった。しかし、そんな諦めも次第に慣れてくる。失敗は無駄ではなく、のちに成功を導くこともわかってくるからだ。そうした経験が重なると、次第に諦めることのショックも和らぐ。犠牲が大きいと、それだけ得られるものも大きくなると予測できる。だから、既存の成果を捨てることができるのだ。

 諦めることが利益となるのは、このように時間や労力をかけて作り上げたものを諦める場合だ。結果的には失敗作だったとしても、ひたすら考え、誠実に作業を積み重ねたとき、諦めには価値が生じる。それは、次に採用するアプローチの成功する確率を高める土壌となるのだ。つまり、簡単に諦められないような取り組みをしていれば、諦めても大きな損害はないということになる。そう考えると、失敗を恐れることなく何事にも取り組める。努力の前に諦めるか迷う人は、失敗を恐れるあまり、自分にブレーキをかけてしまっているのだ。