「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、10期連続最高益を更新中のワークマン。「しない経営」「データ経営」で改革を実行した急成長の仕掛け人が、ワークマン専務取締役の土屋哲雄さんです。今回、土屋さんに「会社が成長するためには、上司はどのように意識を変えるべきか?」を直接、お聞きしました。全5回でお届けします。「頭の良い人ほど目標をあきらめる」「ノルマを課す方法は間違っている」と述べるその理由は何でしょうか。
ワークマンの経営目標は
「客層拡大」たったひとつ?
――土屋さん、こんにちは。ワークマンの経営目標は「客層拡大」のみと聞きました。短期目標やノルマはないのですか?
はい。経営目標はブルーオーシャン市場の拡張、つまり8年間「客層拡大」のみです。
私は還暦直前にワークマンに入社しました。以前、総合商社で経営企画をしていたことがありますが、そこにいて感じたのは、とにかく目標が多すぎるのです。
たとえば、「中期計画3年で実行する」といったものが5つあると、そのためには人事系の目標が5つ、管理部系にも目標が5つ必要だとなり、結局、会社全体で20~30の目標ができてしまいます。
でも、たくさん目標を立てて、それらをすべて「3年で達成する」といってもなかなか実現できません。それらをブレイクダウンして、いろいろな部署に目標を設ける。すると社員一人一人に期限付きのノルマが生まれる。経営者は、「社員それぞれに何かしら目標を立ててあげないとかわいそう」と考えてしまうのですね。いい経営者ほど欲張りですから「いっぱいやりたがる」し「早くやりたがる」のです。経営者がプレッシャーを感じるのはいいけれど、末端の社員にまでプレッシャーをかけてストレスを与える必要が本当にあるのでしょうか?