aikoと結婚したかった男
青春の遠のきを実感

 学生時代aikoとの結婚を夢見ていた男性(39歳)は、すでに別の女性と結婚して子どももいる。彼はaiko結婚を聞いてどう感じたか。
 
「率直に少しショックですが…。ショックを受けていいような筋合いの立場でもないので」
 
 このあたりは好きだった異性の芸能人が結婚したときに覚えるあの感情であろう。憧れの人が結婚すると、たとえそれが手が届かない存在であったとしても、得てして落ち込むものである。
 
「でも素直にうれしいです。aikoは愛を教えてくれた人なので、『その愛をついに手にされたのですね!』と喜んでいます。
 
 青春が終わった感じがしますね。終わっているものを改めて感じさせられたというか。いや、いい意味で『大人になっている』ということなんだと思いますが」
 
 aikoのデビューはインディーズで1997年、メジャーで1998年である。そして最初の大きなヒットとなった楽曲が1999年の『花火』で、その他にも多くの持ち曲があるが、ほぼ全てが恋愛に関する内容である。我々は若い頃、aikoの恋愛ソングを聴いて「ああかわいい、かわいい」と騒いでいた。
 
 また、aikoの生年は1975年で、筆者が1980年生まれだから、aikoは「少し年上のお姉さん」であった。しかし、見た目が幼いこともあって「年上のお姉さん」という感じの受け止め方をしなかった。同世代か、ともすれば年下にすら思えるかわいい女の子が楽曲中で歌い上げるせつなげな心境や恋愛観が、これでもかと若人の青い心を刺激し続けてきたのであった。
 
 では、どういう男性がaikoを好んで聴いていたかというと、これは多岐にわたる。

 筆者は当時パンツにカニの爪を縫いつけたり、髪に無造作にバリカンを当ててちょんまげ崩れになったりととんがっていたが、aikoが好きだったし、女性関係が激しい男やケンカっぱやい男、油断して目を離すとすぐ引きこもりになってしまう男もaikoが好きであった。普段はわけのわからないジャズを聴いている男も実はaikoが好きだったりして、とにかくあちこちにいる。このファン層の幅広さはさすがメジャーの知名度といったところだが、その知名度に乗せてaikoはよく刺さってくる音楽を提供してくれていたのである。
 
 もちろん、もっと丸くやわらかい性格の男たちもaikoが好きであった。そして「aikoが好き」という同士を見つけたとき、それだけで「こいつとはもう全てをわかり合えている」という過剰な一体感を覚えたものであった。