夕夜間の有料着席列車についてもコロナ以降、帰宅需要が早い時間帯にシフトしていることを受けてダイヤが変更される。小田急は「ホームウェイ号」と「メトロホームウェイ号」、東武は「THライナー」の運転開始時刻を1時間繰り上げる。東急は大井町線の有料座席指定サービス「Q SEAT」の運転開始時刻を30分繰り上げるとともに、対象列車を1本増発する。

 一方で遅い時間帯は運転を取りやめる列車もある。JR東日本は21時以降に上野駅を発車する下り「スワローあかぎ」2本を臨時列車に格下げし、利用が見込める日のみ運転するとした。前述の「ホームウェイ号」は22時以降に新宿を出発する列車を2本削減。「メトロホームウェイ号」と「THライナー」は運転開始時刻を繰り上げる代わりに22時台に始発駅を発車する列車の運転を取りやめる。そのほか、JR東日本と東武、西武、小田急は夕夜間の優等列車、各駅停車を減便する。

 需要のある列車は厚く、減った時間帯は削るというメリハリの利いた改正は今後も続きそうだが、有料着席列車重視のダイヤ改正は追加料金を払えば快適な通勤ができるが、払えない人は(コロナ前ほどではないにせよ)混雑した列車に押し込まれるという「分断」にもつながりかねない。それが資本主義だと言ってしまえばそれまでだが、小田急などはコロナ以前から複数駅に始発列車を設定することで追加料金を払わなくても着席できる機会を設ける取り組みもしている。

 皆が同じ時間帯に都心に向かって通勤する画一的な大量輸送は満員電車を生み出した。せっかくそれから解放されたのに混雑を縮小再生産しては意味がない。ダイヤの余裕を新たなサービスに振り向けつつ、ゆとりのある車内空間を確保して、様々な利用者のそれぞれのニーズに応える。これこそが、アフターコロナの「新しい鉄道様式」なのだと思う。