お金の10大原則(9)
「稼ぐ能力」に投資せよ

 将来に備えて、持っているお金を金融資産などに投資するのはいい心掛けだ。ただ特に若いうちは、自分の将来の「稼ぐ能力」に投資できる有効な機会があれば、逃すべきではない。

 例えば大学の学費は、おそらく大学に行かずに同額を金融資産に投資するよりも大きな経済価値を将来生むだろう。

 将来の広義の稼ぐ能力につながる支出には、「教育」「経験」「時間」「人間関係」などさまざまなものがあるが、お金は投資して増やすばかりがいいのではない。有効に使ってこそ価値があるし、特に投資的支出には敏感でありたい。

お金の10大原則(10)
親のお金を守れ!

 一通りのマネーリテラシーを身に付けた大学生に、ぜひ実行してほしいことがある。それは、親のお金の状況の確認と、おそらくは大いに必要なはずの改善作業に親を導くことだ。

 率直に言って、近い将来の大学生本人よりも、その親の方が大きなお金を持っている場合が多いだろう。また残念ながら、子ども世代が親世代よりも生涯を通じて稼げないケースが少なくない。こうした場合に、親の財産は将来の子どもの財産として相続されるかもしれないし、親自体の老後にとってお金が必要だという事情もある。

(1)親の財産がどこの金融機関にどの程度あるか、(2)親は金融マンの言いなりになっていないか、(3)資産の運用状態に無駄はないか(年率0.5%以上の手数料を払っている、ないしは実質的な手数料の分からない金融商品は「全て」ダメだ。毎月分配型〈奇数月分配型も〉の投資信託、ラップ運用、外貨建て保険、が代表的な三悪商品である)、をチェックしてみよう。

 問題がある場合、親を説得してダメ商品を解約・換金し、シンプルで合理的な運用(リスクを取りたくないお金は「個人向け国債変動金利型10年満期」がいい)に切り替えよう。この際に、親が今まで利用してきた金融機関から、別の金融機関に資金を移す方がいい場合が多い。現在の大学生の親世代はネットを使えるだろうから、ネット証券、ネット銀行等の利用をお勧めする。

 親は億劫に感じることが多いだろうが、一連のチェックと改善作業には大きな価値があるはずだ。

 なお、親が高齢であるというだけの理由で、リスク資産での運用を縮小するのは「もったいない」。親子で協力して、適切なリスクの運用を継続することが合理的だ。

 こうして書いてみると、もう少し伝えたいことを思いつくし、もちろん個々の項目を大学生に分かってもらえるように丁寧に書く必要がある。筆者に連絡してくれた学生のアドバイスと協力を得て、本を1冊書いてみる必要がありそうだ。