書くと不安がなくなる。自分自身が整理される。そう経験的に感じている人も多いだろう。だが、それはなぜか、どういう書き方が効果的なのかを知っている人は少ない。不安な時代こそ、知識やスキルを焦って付け足すのではなく、自分を深く知ることが大切だ。答えを自分の外にではなく、内に見出すこと。そのために有効なのが「書く」ことだ。
習慣化のプロとしてこれまで5万人を指導し、1000人以上をコーチングしてきた古川武士氏が、行き着いた最も効果的な習慣は「書く」ことだった。必要なのはノートとペンのみ。自分と向き合い、本当に大切なことに気づけば、生き方は今よりずっとシンプルになる。自分を整理するための「書くメソッド」を体系化した書籍『書く瞑想』から、一部を抜粋して特別公開する。
「価値観マップ」で判断軸を作る
「自分にとって大切なことは何か?」という価値観を言葉にしながら探っていく「価値観マップ」をご紹介します。
自分の価値観を探り、それを軸に生きることで真の充足がやってきます。
思いつくまま瞑想的に書き出す言葉は、あくまで感情を揺さぶった出来事と感情です。これらは気持ち、気分、欲求などが出ていますが、真相の願望まではあまり出ていないと思います。
感情の深層にあるものは、価値観を根底にした願望です。表面的な楽しい、しんどいというものではなく、大変だけどやりがいがある、リスクはあるけどワクワクするという感情は、価値観から生まれます。
表面的な感情を整えるだけでは、真の心の充足は得られません。
価値観という内なる基準は、内面世界の中軸です。これがぼんやりしていると何がやりたいのかわからず、目標が見つからないことになります。
価値観が言語化されていくごとに、自分の大切なことを内側で感じ取ることができるようになります。
ここに価値観のキーワードを示す一例を紹介します。これらを見てみると、自分に近いもの、遠いものがあると思います。
自由、感動、遊び心、挑戦、安心、安定、平和、一貫性、秩序、規律、調和、思いやり、繋がり、シンプル、バランス、愛、学ぶ、成長、正義、友情、貢献、誠実さ、信頼、正直、楽観、共感、合理性、謙虚、正義感、力、コントロール、独立心、主導権、平穏、快適、リラックス、美、感性、ひらめき、直感、発明、創造、想像、知らない世界、アレンジ、規則、啓蒙、献身、理解、偉大さ、上品、輝き、最高、未知、勝負、奉仕、卓越、インパクト、熟達、変化、一体感、役割、リーダーシップ、楽しさ、個性、成功、有能
人それぞれ、心の最奥で眠っている価値観を言語化しておけば、人との比較や目標数値や人からの評価に心が乱されるとき、これを読めば本当に大切にしている中軸に戻ることができ、内的安定性を感じることができます。
言ってみれば、心のコンパスとなり得るものであり、常に「私は何を大切にしているのか?」という確認ができます。
ただし、ここに示した価値観キーワードに縛られないでください。
あなたが紙に向き合うと自然に湧いてくる言葉が一番です。天然水が大自然の中で濾過されて湧き出してくるように、自分の全身を通過して、湧き上がってきた言葉だけが価値観を反映する言葉です。
キーワードは自由に考えてください。他人にはよくわからないことでも構いません。自分にとってしっくりくるキーワードが重要です。
また、ただキーワードを書き出すだけではなく、図解や絵にするとさらにその内側の価値観を豊かに表現しやすいでしょう。
どう書くのか?
書き方の手順を紹介
まず白い紙を用意します。
「私にとって大切なことは何か?」
これを中核的な質問にして自由にキーワードや図で表現していきましょう。
その際、放電・充電日記(気持ちを下げたこと、上げたことをそれぞれ書き出した記述)、先ほどのキーワードリストも参考にしてください。ただ、言葉は自分の内側から湧いてくる自然な言葉がベストです。
また、図解は自由です。下に実際にワークを行った人の事例を示しておきますので参考にしてください。文字も図解も自由に書くことで、価値観をさらに豊かに表現できることになります。
・ゼロベースで自由に書く
・価値観となる言葉は、先に書き出した放電・充電日記を見て、内側に尋ねながら書く
・図解や絵にしてもいい
・色を変えたり、イラストを書いたりすると想像力が刺激される
・アウトプットの完成度にはあまりこだわらない
・「私にとって大切なことは何か?」を感じ対話を重ねていく
・時間は「15分」を目安にする
(本原稿は『書く瞑想──1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』からの抜粋です)