感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

精神科医が教える「自分に嘘をつく人」の特徴とは?イラスト:カツヤマケイコ

現実から目を背ける心の防衛反応

きょうのひとことは、
「嫌なことはやめていい」

やめたくてもやめられないことが、世の中には多々あります。

自分が好きでやめられないということならいいのですが、嫌なのにやめられないということもあります。

なかでも、やめようと思ったらやめられる嫌なことは、勇気を出してやめることが大事です。

人は対処できないことがあると、それを受け入れようとするため、自分の気持ちを無意識に加工してしまう癖があります。

これを精神分析の世界で「防衛機制」といいます。

防衛機制というのは、ストレスや葛藤、不安や不満といった苦痛から自分を守ろうとする「心の防衛反応」です。

もともとは精神分析学の創始者であるフロイト(1856~1939年)が考えたものですが、のちにハーバード・メディカル・スクール(ハーバード大学医学部)教授のジョージ・E・ヴァイラントという人が、防衛機制を心の成熟度によって4つに分けました。

病理的防衛(pathological defences)
 5歳以下の子どもに多く見られる
 例:否認=認めたくない現実から目をそらす
未熟な防衛(immature defences)
 3~15歳の子ども多く見られ、成人にも見られる
 例:退行=発達に逆行して未熟な言動をする
神経症的な防衛(neurotic defences)
 成人にも多く見られる
 例:抑圧=認めたくない気持ちを抑える
成熟した防衛(mature defences )
 12歳以降に意識して行われる
 例:補償=劣等感をほかの優越感で補う

防衛機制には、ほかにもたくさんの例があるのですが、ここでは説明しきれないので、大雑把な例だけ挙げておきました。

先ほど触れたように、自分の気持ちを加工するにしても、いい方法とあまりよくない方法があるとされています。

よい方法というのは、自分の劣等感をほかの優越感で補おうとする「補償」と呼ばれるもので、たとえば運動は苦手だけれど勉強を頑張る、数学は苦手だけれど国語は得意なので頑張る、といったことです。

社会的には認められない感情や欲求を社会的に認められることで満たす「昇華」と呼ばれるものもあって、たとえば社会に対する反骨心を歌や芸術にして表現する、嫌いな人に対する反抗心をバネにして勉強やスポーツを頑張る、といったことです。

一方、あまりよくない防衛機制としては、「合理化」というのもあります。

これは満たされなかった欲求や受け入れがたい現実について、もっともらしい理屈をつけて自分を納得させようとするもので、イソップ寓話『すっぱい葡萄』の例が有名です。

キツネが木にたわわに実った美味しそうな葡萄(ぶどう)をとろうとするのですが、何度跳び上がっても届かないため、「どうせこんなぶどうは、すっぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか」と捨て台詞を残して去っていったという例です。

精神科医が教える「自分に嘘をつく人」の特徴とは?Photo: Adobe Stock

目の前の現実を受け入れず、なんだかんだと理屈をつけて自分を正当化する。

これを今回の本題である「嫌なことをやめる」ということに置き換えて考えてみると、嫌なことをやめることが、まるで悪いことであるかのように、自分自身に暗示をかけてしまうという側面が見えてきます。

でも、嫌なことを無理やり正当化して続けるより、やめたほうがよほど前向きで健全なはず。

嫌なことを続けている人は、いつの間にか自分を正当化してしまっているのです。

それは健全とはいえませんから、勇気を出してやめてしまったほうがいいです。

きょうのひとことは、
「嫌なことはやめていい」
でした。

参考になったかしら?