感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』では、「期待」「不安」「選択」「好意」「悪意」「女王」「迷い」「決意」という8つの物語を通じて、多くの人が抱えがちな不安や悩みの解決法を説く。この自身初の小説の刊行を記念し、小説を書くに至った経緯や物語に込めた思い、作品に出てくる珠玉の言葉の一部などをお届けする。

【初の執筆で珠玉の小説】<br />自分のやりたいことを貫けば<br />どこかの誰かはガッカリするイラスト:カツヤマケイコ

不安になりやすい人ほど、より先のことを考える。

せっかくなので、『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』からセレクトした言葉を少しだけ紹介したいと思います。

自分のやりたいことを貫けば、どこかの誰かはガッカリする。でも、1番あなたのことをわかっている人は、ガッカリしない。2番目にあなたのことをわかっている人は、ガッカリしても言わない。1番わかっていない人は、「君にはガッカリした」と、わざわざ言いにくる。そんな人は、気にする価値は、これっぽっちもない。

これは、ある有名人のTwitterで、「ファンの人からガッカリしたと言われて困っている」といった内容のツイートが目に入り、「自分だったらどうアドバイスするだろう」と考えるなかで生まれた言葉です。

個人的には「ガッカリした」とダイレクトに言われた経験は記憶にありませんが、たまにヘンなことを言ってくる人はいます。

でも、あまり気にせず、スルーしたりミュートしたりしてやり過ごしています。

あらためて「どうして自分はやり過ごせているんだろう」と考えると、「ガッカリした」とわざわざ言いにくる人は面倒くさい人だとわかっているから、と気づきました。

だから、それを文章化したわけです。

不安になりやすい人ほど、より先のことを考える。先のことは、まだ何も決まっていないし、誰にもわからない。不安に思おうと思ったら、いくらでも不安になれる。でも、振り返ってみると、なるようになって、今まで生きてきたはず。これからもなるようになるから、大丈夫。

これは精神科医的には「あるある」の話です。

「先どりしやすい人は不安になりやすい」というのは昔から言われてきたことでもあります。

「わかっていない先のことを考えすぎると、いくらでも悪いほうに考えられるので、不毛だよね」ということです。

ストレスを減らすたった1つの方法、それは「手放す」こと

素晴らしいパートナーというのは、不満のない相手じゃない。そんな人は、いない。不満のない相手ではなく、「不満を伝えられる相手」が素晴らしいパートナー。

これはパートナーと死別したあとに、新しいパートナーを探そうとして、うまくいかなかったアテクシ自身の経験に基づく言葉です。

相手に嫌われたくないと思うあまり、自分が下手に出すぎてしまうパターンに入ったとき、うまく行かないことに気づきました。

だんだん対等な関係でなくなってきて、一緒にいると疲れてしまうんです。

相手の顔色をうかがうというのは、パートナーシップが駄目になる第一歩です。

何か不満を感じたとき、最初に勇気を出して口にすると、そのときはケンカになるかもしれないけれど、なんでも言い合える関係をつくることができるんです。

ストレスを減らすたった1つの方法、それは「手放す」こと。執着を手放す、「こうならなきゃいけない」を手放す。手放せるものは、たくさんある。手放せば手放すほど、心は楽になっていく。そして、最後にどうしても手放せないものが残る。それが生きる理由。

これはアテクシのTwitterで、最も大きな反響があった言葉です。

このツイートをしたのは、パートナーが亡くなったあと、いろんな人間関係のトラブルに巻き込まれて、「なんでこんなひどい目に遭わなきゃいけないの?」と苦しんでいた時期でした。

本当に重要なことだけ考えないと、どうしようもない状況にまで追い込まれ、必要に迫られて片っ端から手放したことで、最悪の状況から脱した実体験から生まれた言葉なのです。

特に重要なのは「最後にどうしても手放せないものが残る。それが生きる理由。」というところです。

当時のアテクシにとっては、パートナーが生きる理由だとわかっていたのですが、アテクシ自身の生きる理由であるパートナーを失ってしまっていました。

世の中には、些細なものにとらわれて、本当に大事なものに気づいていない人が多いかもしれません。

それはとてももったいないことなので、大事なものがまだ残っている人に向けて気づいてほしい、という思いを込めて書きました。

このように、これまでの経験や人生の中で得た発見を、今回の小説にはふんだんに盛り込んでいます。

ぜひ共感したり楽しんでいただけたりしたら嬉しいですね。
(構成:渡辺稔大)