政治で顕在化する「コロナ前に戻りたい派」vs「新しい社会を創りたい派」の戦い写真はイメージです Photo:PIXTA

オミクロン株の感染が世界中で急拡大する一方で、英国などでは、経済活動を優先する方針を示している。日本でも、尾身茂・政府分科会会長が「これまでの『人流制限』ではなく『人数制限』がキーワードになる」と指摘していて、「ポスト・コロナ」の社会のあり方が本格的に模索されることになる。そして、次第に浮上してくるのは、「元に戻りたい人たち」と「新しい社会を創りたい人たち」の争いだ。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

「元に戻りたい人たち」と「新しい社会を創りたい人たち」

「ポスト・コロナ」の社会は、コロナ禍以前に戻るのか、それとも新しいシステムに変わっていくのか。今年はターニング・ポイントになるかもしれない。

 そこで、「元に戻りたい人たち」と「新しい社会を創りたい人たち」の争いが起きそうだ。

「元に戻りたい人たち」とは、「コロナ禍」対応をあくまで「緊急事態」だと捉える。「緊急事態」が過ぎ去れば、「平時」の社会に戻りたいと考える人たちだ。

 例えば、企業等での「働き方」について、定時に出社して勤務する。対面の営業も復活し、社内の「飲みニケーション」や客先との接待で、密な関係を築く日本型の働き方に戻ろうとする。

 大学など学校でも、「コロナ禍」が過ぎ去れば、全面的に対面授業という以前の授業スタイルに戻りたいと考える。サークルなどの課外活動も、コンパのような交流も以前の形が戻ることを望む。

 一方、コロナ禍で会社・学校などで導入されたリモートワークや会議・授業などのテクノロジーを使い続けたいと考える人たちがいる。要は、「できたことをやめなくてもいい」という考え方をする人たちだ。

 自分の家にいながら、仕事ができるし、学べる。海外の会議にも参加できる。「移動」が必要ないこの新たな状況を、私は「スーパーグローバリゼーション」と評したことがある(本連載249回)。

 移動が必要なくなり、空くことになる時間と場所は、新しいことに使えばいい。それがイノベーションを生み、社会を進歩させるべきだということだ。
 
「戻りたい人たちvs新しい社会を創りたい人たち」の対立構図は、職場や学校という現場から、政界・官界・財界、そして国際政治に至るまで、さまざまな場面で起こるだろう。