「自分の考えや打ち合わせ内容をその場で図解する。このテクニックがあれば、会議、ブレスト、プレゼンが劇的に変わる。考える力と伝える力が見違えるようにアップする」
こう語るのは、アートディレクター日高由美子氏。「ITエンジニア本大賞2021」のビジネス書部門グランプリを獲得した『なんでも図解ーー絵心ゼロでもできる! 爆速アウトプット術』の著者だ。「フレームワーク」や「キレイな絵」を一切排除し、瞬間的なアウトプット力の向上を徹底的に追求するワークショップ、「地獄のお絵描き道場」を10年以上続けている。複雑なことをシンプルに、難しい内容をわかりやすく。絵心ゼロの人であっても、「その場で」「なんでも」図解する力が身につくと評判になり、募集をかけてもすぐキャンセル待ちに。
本連載では「絵心ゼロの人であっても、伝わる図を瞬時に書くためのテクニック」を伝える。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

「人数」にフォーカスして、派閥を図解!

 菅総理大臣の後任を巡って総裁選の話題が毎日のように報道されています。

 前回は「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を1枚の図にまとめました。本日は、派閥の構成比率に焦点を当てて図解します。

参照:前回記事『「自民党の派閥」と「総裁選の候補者」を【1枚の図】にまとめた!』

【参考文献】※クリックで記事に飛びます
●Wikipedia 自由民主党の派閥
●2018年の数値参考:選挙ドットコム(2018/7/17)
「カギを握るのは「派閥に属していない議員」。自民党の各派閥の人数は?」

 構成比率を表す型として円グラフや帯グラフがあります。次のイラストを見てください。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

 円グラフは、全体の中での構成比を円形で示すときに用いられます。特徴としては図形としてインパクトがあり目に入りやすい点があげられます。また、部分相互の比較や、1/2、1/4などの割合は読み取りやすいことが利点といえるでしょう。

 気をつけたいのは、項目が多いと細かな分割となり角度の差だけで割合を読み取るのが難しい点です。

 数値から割合を計算してこのような2021年の派閥人数構成比の円グラフを作成しました。円グラフは見た目のインパクトはありますが、棒グラフのように衆議院・参議院の人数もわかるような積み上げの表現はできません。下図を見てください。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

円グラフは比較に使える?

 この円グラフ、単体で構成比を伝えることはできますが、時系列での比較に使えるか、検証してみましょう。3年前の2018年の数値を参考にします。

【2018年の各派閥の人数】
細田派(清和政策研究会)96名
麻生派(志公会)65名
竹下派(平成研究会)55名
二階派(志帥会)44名
岸田派(宏池会)48名
石破派(水月会)20名
石原派(近未来政治研究会)12名
無派閥72名

 さっそく図にしてみました。下図を見てください。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

 いかがでしょうか。数値が入っているので内容がわからないわけではありませんが、ぱっと見て変化が伝わる図とはいえません。

 円グラフは、構成比を表すとき「特に1項目に注目してその割合をわかりやすく見せる」のに大変適しています。

 しかし、このような複数項目の時系列での比較をしたいときには、その差がわかりにくく、見る人を悩ませてしまうことが多いのです。特に今回のように数値の差が顕著でない比較をする場合、「円グラフ」は使い物になりません。

そんなときはこの「帯グラフ」!

 複数の構成比を比較したいときは、帯グラフを活用しましょう。次のイラストを見てください。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

 全体を100%とするところは円グラフと同じですが、同一の内訳を少し細めの線や点線(区分線)で結んで比べやすくできるため、複数のデータを比較するときにも理解しやすく表せます。

 帯グラフは「100%積み上げ縦棒グラフ」「100%積み上げ横棒グラフ」と表記されることもあります。派閥の人数構成の比較を、帯グラフを使ってグラフを作成しました。グラフを見てください。

自民党派閥の勢力比を「1枚の図」にしてみた!

 このように微妙な差でもわかりやすく割合の変化が表現できるため、今回のような「時系列での構成比の変化」を伝えるのは帯グラフがふさわしいといえます。

 グラフの用途や役割を理解しておくと、いざPCに向かったときも迷わずグラフを活かした資料作成ができます。

 かつて、円盤のようにずらりと並べられた3D円グラフの資料を前にフリーズしているクライアントを目撃したことがありました。複雑な複合型のグラフや3Dのグラフも簡単に作成できる今だからこそ、資料を作るときには基本の型や使う目的をふまえて、「そのグラフは本当に最適か?」を確認しながら作成していきましょう。