トランプ前大統領の
次期大統領就任が濃厚に

「共和党の愛国者たちの勢いは止められないぞ!民主党の社会主義者たちを落選させる!」

 中間選挙を目指してアリゾナ州で今年初めての大規模集会を16日開いたトランプは、そう怪気炎を上げた。聴衆の数は約1万人。トランプ熱は日本で想像する以上にまだ熱いのだ。

 2月下旬にトランプが立ち上げる新しい保守系のソーシャルメディアプラットフォーム“TRUTH Social”(真実のソーシャルメディア)を運営するSPAC(米特別買収目的会社)の時価総額も先月、24億ドルを上回った。

 11月8日に実施される中間選挙では、連邦議会上院(任期6年、定数100)の約3分の1に当たる34議席と下院(任期2年、定数435)の全議席が争われる。

 アフガニスタン撤兵の混乱やコロナ感染拡大、記録的な物価上昇などでバイデン大統領の支持率が40%程度と低迷している民主党の旗色が悪い。

 歴史的に見ても、アメリカでは大統領就任から最初の中間選挙で与党がほとんど敗北している。よほどの逆転劇がない限り、今年も与党民主党が負ける確率は極めて高いと大方の専門家はみている。バイデン大統領の不人気と露骨な投票抑圧が相まって、共和党の圧勝ということも十分考えられるのだ。

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 そうなれば、復讐に燃えるトランプが次期共和党大統領候補に選ばれることは、現時点で確実だろう。それほど共和党はトランプに恐怖支配されている。大統領再選となれば、2024年に敗北するのは他ならぬアメリカの民主主義だ。選挙そのものの信頼性が失墜するからだ。

 昨夏、「あなたの再出馬を阻むものはなにか」と保守派ケーブルテレビ番組で質問された75歳のトランプは、赤茶けた顔に笑みを浮かべながら次のように答えていた。

「医者からの悪い知らせだけだ」

(国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 蟹瀬誠一)