Jリーガーの代表にとっては「死活問題」
政府から出された試合開催の条件

 ただ、開催に当たっては政府から課された条件があった。須原専務理事が続ける。

「直近でいえば昨年10月のオーストラリア代表とのアジア最終予選と比較しても、よりいっそう厳格な防疫措置を実施することになっています」

 具体的には、日本へ向けて出国する96時間前以内に2度のPCR検査を受け、その上で入国時には陰性証明書を提示する。日本代表に招集されるヨーロッパ組も対象となり、さらに3カ国の選手団全員に対しては、活動期間中に毎日検査が実施される。

 活動地域を宿泊ホテル、練習および試合会場との往復に限定し、外部との接触を遮断する「バブル」の実施状況を、監督官庁のスポーツ庁が直接チェックする。これらは昨年の段階で既に経験済みであり、JFAもノウハウを持ち合わせていた。

 しかし、従来の防疫措置とは明らかに一線を画し、JFAを驚かせたのがJクラブから招集された選手だけに課された、代表活動終了後の14日間に及ぶ隔離義務だった。

 日本は中国戦に続いて2月1日にサウジアラビアと戦い、今回の活動を終える。速やかに出国してそれぞれの所属クラブへ戻るヨーロッパ組とは対照的に、国内組は一夜明けた2日から隔離の対象となる。政府の指示にJFA側は頭を抱えた。

 例えば、JFA技術委員会の反町康治委員長はこう語っている。

「最初に政府からこの案件が下りてきたときは、われわれとしてもクラブへの説明が難しかった。シーズン開幕前の一番大事な時期に、死活問題にもなるものだったので」

 2月18日には2022年シーズンのJリーグが開幕する。1月17日から始まった国内組だけを対象としたキャンプからアジア最終予選を経て、さらに隔離措置に入るJリーガーは、所属クラブを1カ月近く留守にした末に、開幕直前にようやく合流できる。

 長いシーズンを戦う上で、開幕前のキャンプは周囲とのコンビネーションを磨き、新戦力との融合も図りながらチームの土台を作る時期となる。このオフに新監督が就任したチームもある。3つのJクラブで監督を務めた経験を持っているからこそ、反町技術委員長も「死活問題」と言及した。

 しかも隔離期間中の2月12日には、昨シーズンのJ1王者と天皇杯覇者が前哨戦として対戦するFUJIFILM SUPER CUPが開催される。川崎フロンターレと浦和レッズから代表へ招集された選手は、必然的に会場の日産スタジアムのピッチに立てない。