ただ、ここで大いなる疑問が頭をもたげてくる。中国およびサウジアラビア、そして日本のヨーロッパ組と、国内組との間に隔離の義務を巡る明確なラインが引かれたのはなぜのか。反町技術委員長は政府側の考え方をこう推察している。

「(この措置は)日本代表の海外組が入国して、さらに海外のチームと試合をする、という状況から生まれてきたものだと理解している」

 つまり、「オミクロン株」は海外由来、という考え方に沿っていたことになる。既に感染経路不明の市中感染が全国規模で確認され、新規感染者数が爆発的に増えていた状況で、国内組の隔離措置は理解できない、という声がネット上にあふれた。

「頭おかしんじゃないの??」
三木谷会長の怒りのツイートが政府を動かす

 要請する立場であるがゆえに、JFAとしては政府から課された条件を受け入れるしかない。もちろんスポーツ庁などを介して再び折衝を始めていた中で、1月12日の夜になって潮目が大きく変わった。きっかけは3連投されたツイートだった。

<日本で行われる代表戦に出た選手は2週間隔離しろと「政府」と「協会」から来た。移動の自由、人権、営業権の侵害だ。海外から来た選手は即練習で、戻って海外で則プレー。頭おかしんじゃないの??>

<そもそも給与もこちらが払ってるのに、代表に出して拘束。話にならん。>

<そもそも政府に日本にいる人間がサッカーの代表戦に出たというだけで、行動を制限する法律的な権利はないと思う。裁量行政の濫用だ。>(すべて原文ママ)

 代表選手を輩出するJクラブの本音を代弁する形で、あふれんばかりの怒気が込められたつぶやきを自身のツイッター(@hmikitani)で立て続けに投稿したのは、ヴィッセル神戸の会長を務める楽天グループのトップ、三木谷浩史会長兼社長だった。

 神戸には森保ジャパンの常連であるFW大迫勇也が所属し、国内組のみのキャンプに招集されていたFW武藤嘉紀も、引き続きアジア最終予選の代表に名を連ねる可能性があった。開幕前に攻撃陣の中心を欠く状況に、我慢がならなかったのだろう。

 耳目を集める過激な言葉を介して問題点を指摘し、自身の影響力を駆使して世論を喚起した効果はてきめんだった。JFAによれば1月14日の段階で、国内組に課す隔離期間を14日間から6日間に短縮する、という旨の連絡が内々に入っていた。

 正式な通達は週明けの1月17日午前にJFAへ届き、すぐにJクラブ側へ伝えられた。世間の反応を見ながら一度下した決定事項を簡単に変える、政府の日和見主義的な一面を結果的にあぶり出した三木谷会長は17日夜に再びツイートした。