“バリアフリー”は万人の生活のために必要なもの
ACEフォーラム2021のテーマは「共生社会が生み出す障がい者のパワーを企業の競争力に」――現在、多くの企業はダイバーシティ&インクルージョンを積極推進し、「誰一人取り残さない」を目標にしたSDGsも巷間に知られるようになった。そうした社会情勢下で、社会や企業は障がい者の持つ力をどう引き出しいていけばよいのだろうか。「バリアフリー」をキーワードに、栗原さんの考えを聞いた。
栗原 ACEフォーラム2021での田口様の講演の中で、「車いすユーザーが電車で移動するには、乗車駅と降車駅の双方の駅員の準備が整わないと乗車できない」という話がありました。駅のホームまでの階段、ホームと電車との隙間、それらは歩行できる人のことは考えて作ってありますが、車いすユーザーのことは当初は考慮されていませんでした。
これは一例ですが、こうしたものは世の中にたくさんあるのでは?と思います。すでにできてしまっている施設やサービスをバリアフリーにするには、時間もお金もかかります。では、これから作る施設や製品・サービス、社会インフラは、その設計時から障がいのあるメンバーに最初から入ってもらうのはどうでしょう?
障がい者の視点は、障がい者のためのみにあらず、だと思います。階段や隙間を利用しづらいのは、高齢者やベビーカーユーザーなど、障がい者だけではありません。障がい者が使いやすい観点から作られた社会インフラや製品・サービスは、万人にとって使いやすいものになります。それは、企業にとっても付加価値であり、自社の成長に寄与すると思います。社会インフラや製品・サービスの企画・設計時から、障がいのある方の知見をどんどん生かしていければより良いものが生まれると考えています。
そして、最近、個人的に注目しているのはメタバースです。先程お話しした分身ロボットを活用しての外出困難な方の遠隔地からの就労ですが、メタバースの中でもきっとこれからさまざまなビジネスが展開されていくでしょうし、そこには世界中どこにいようとも、外出困難な状況でも、社会やビジネスに参画できるのではないでしょうか。さまざまな表現方法やアイデアで障がい者の能力やスキルを生かせる分野がたくさんあるのでは?と期待しています。