コロナ禍におけるテレワークと障がい者の就労

 今年2022年になってのオミクロン株の感染拡大で、まだまだ予断を許さない新型コロナウイルスの蔓延。雇用調整、テレワーク、時差出勤など……企業で働く障がい者の就労スタイルにも大きな影響が出ている。

栗原 ACEでは、2020年に会員企業内で働く障がいのある社員に、コロナ禍で働き方がどう変わったかのアンケート調査を行いました(*2)。会員企業はコロナ禍以前からテレワークが可能だった会社も多く、9割の方々がテレワークや時差通勤を行ったという回答がありました。当初の予想では、直接のコミュニケーションができなくなり、不便なことや不安になることが多いのでは?と思い、早くまた出勤できるのを望まれているだろうというものでしたが、実際は7割の方がテレワークを引き続き希望し、もとの勤務形態には戻りたくないというものでした。

 障がいのある方が「通勤」から解放されることで、体調管理も良好になり、仕事の効率も上がりました。また、聴覚障がいのある方には、自宅からのオンライン会議の参加はマスクをしないために表情が読み取れ、音声を文字に変換するツールを利用することで発言がテキストとして残るというメリットなどもありました。

 ACEの会員企業であるヤマトホールディングス株式会社のグループ企業のヤマトシステム開発株式会社では、精神・発達障がいのある社員の在宅勤務チームをつくり、「働きたいけれど、通勤が困難」という悩みを抱える社員のために、在宅でも可能な業務を切り出し、データ入力や資料作成などの営業支援を行っています。業務開始時に体調報告をシステムで行い、その状況を数値化して、管理者が部下の健康を管理しやすくするなどの工夫も行い、在宅勤務でも能力を発揮してもらい、定着率向上にも成果を上げています。また、ACEフォーラム2021の会場で展示も行いましたが、日本電信電話株式会社は、分身ロボット「OriHime-D」を活用し、東京の本社ビルの受付業務を遠隔地にいる外出困難な方々によって行っています。

 これらの事例は、コロナ禍前より準備が進められていましたが、出勤しなくても業務を行うことができる新しい働き方をより推進することになりました。

 ACEの、障がいのある学生を対象にしたインターンシップ(*3)やキャリアセミナーも、これまでは、関東圏と関西圏の都市部のみでの開催でしたが、コロナ禍でオンライン開催となったため、参加することが難しかった大都市圏以外からも多くの参加者を得ることができました。また、東京と大阪で開催していた大学関係者との情報交換・懇談会も、オンライン開催によって、日本中の大学の就労支援担当者とのネットワークを広く築くこともできました。

 今後、企業の障がい者採用において、都市圏在住にとらわれずに広く人財を求めることができるようになったと思います。

*2 参考記事「大企業で働く障がいのある社員は、コロナ禍でどうしているか?」(ダイバーシティ&インクルージョンメディア「オリイジン」)
*3 参考記事「障がいのある学生が大企業のインターンシップで得たもの」(ダイバーシティ&インクルージョンメディア「オリイジン」)