沸騰!M&A仲介 カネと罠#8Photo:ojogabonitoo/gettyimages

今、M&A仲介業界で必ずといっていいほど話題に上るのが急成長中のfundbookだ。業績や陣容が急拡大しているのがその理由だが、その原動力の一つが大量に移籍した日本M&Aセンター出身者たちだ。特集『沸騰!M&A仲介 カネと罠』(全15回)の#8では、業界内で勃発している仁義なき人材争奪戦に迫った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

日本M&Aセンターから転職者続出
“辞めセンター”がけん引するfundbookの急成長

 8分の5――。この数字は、M&A仲介会社fundbookの全取締役に占める、日本M&Aセンター出身者の数だ。

 fundbookは、M&A仲介業界で最も注目されている新興企業だ。非上場のため、詳細な業績は開示されていないが、売上高はすでに中堅の名南M&Aを上回り、成約件数でも同社と同水準に達しているもようだ。

 fundbookの成長スピードは特筆に値する。2020年3月期の売上高は35億6000万円。売上高35億円に到達するまでにかかった期間は、17年8月の創業からわずか3期だ。御三家の一角、ストライクは売上高35億円到達まで創業から22期を要した。事業環境が違うため単純に比較できないとはいえ、いかにfundbookが飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているかが分かる。

 そう遠くない未来、ストライクを追い落とし、新御三家として日本M&AセンターとM&Aキャピタルパートナーズに並ぶ存在となる可能性も十分にある。

 そんなfundbookの急成長を支えた要因の一つが、冒頭に挙げた日本M&Aセンターから移籍した5人の取締役だ。社内ではこの5人以外にも、“辞めセンター”たちが現場を支えている。

 日本M&Aセンターホールディングスの三宅卓社長は、「社員の同業他社への移籍は、業界のレベルアップと活性化につながる良いこと」と意に介さない様子だ。だが、21年6月にfundbook取締役に就任した、谷口慎太郎氏の移籍は、少なからず同社に衝撃を与えたに違いない。