【戦略3】コンビニの別業態
ローソンストア100の戦略

 コンビニ3強の中で唯一100円ショップ業態を持っているのがローソンです。そのローソンが全国約700店舗弱を展開するのがローソンストア100。その前身は99円均一で日用品から食品までを展開するSHOP99でした。このSHOP99に資本参加をしてローソンの傘下に収め、店舗ブランドもローソンストア100として展開を始めたのです。

 ローソンストア100が存在するのは首都圏、名古屋、大阪など主に大都市圏なので、地方の方はあまりご存じないかもしれません。普通の100均と違って食品ジャンルが充実しているのが特徴で、私も個人的には一番よく使う100円均かもしれません。

 さて、このローソンストア100ですが、最近鮮明になってきた新しい戦略は、私の目から見れば「脱100均」に向かっているようです。

 他の100均競合が200円商品や300円商品を増やし始めた時期に、ローソンストア100はなぜか「きりの悪い価格設定の商品」の導入を推し進めました。

 キユーピーマヨネーズやカップヌードルなど、有名ブランドの商品を267円とか158円といった具合に、普通の価格設定で棚に置き始めたのです。

 このやり方も100均の200円商品と同じで、導入当初は消費者が混乱したものですが、ローソンストア100ではビールや牛乳1リットルパックのように、「そもそも100円じゃないよな」と思える商品も混在していたせいか、徐々に消費者が普通に受け入れるようになりました。

 その象徴が、カップ麺売り場です。カップ麺はローソンストア100の主力商品の一つです。100円のカップ麺もたくさんあることはあるのですが、「これおいしそうだな」と思うカップ麺は、たいがい178円だったり248円だったりという状況が起きています。

 今では100円じゃない商品の数がどんどん増えた結果、ローソンストア100は100円ショップではなく、価格帯の安いコンビニのような業態へと変貌しました。

 そしてその状況を見ると、「どうやらこのこと自体が、ローソンが考えていたローソンストア100の業態戦略なのではないか?」と気づかされるのです。

 実は長期にわたるデフレ経済の中で、日本社会では「所得の二極化」という現象が起きています。安定したサラリーマンはなんとか中流の下の生活を維持できている一方で、非正規労働者の単身世帯を中心に、中流には入ることができない所得層の生活者の数が増加しています。

 そのような層にとっては実は大手コンビニエンスストアは「手が届くぜいたく」であって、いつもなんでも買いに行けるような場所ではないのです。

 そこで、社会のニーズとして求められるコンビニよりもやや平均価格帯が低い新業態に、ちょうどローソンストア100がぴったりと合致したと言えそうです 。

 100円で売っている商品も多いけれど、全部が100円というわけではない。しかし、概して言えば、すべての食品がコンビニで買うよりもお得だし、高くてもスーパーと同じくらいの価格で買える。しかも24時間営業で、日用雑貨だって品ぞろえは少ないけれど100均と同じ価格なので家計の負担にならないというわけです。

 さて、このようにデフレ経済が生んだ庶民の味方だった100円ショップは、原油高、円安、物価高のインフレ経済の中でこれまでのポジションを変えざるをえない状況に来ています。

 三つの会社のどの戦略が生き残りにつながるのか? それとも第四、第五の道がありうるのか? 業界の未来を期待しながら見ていきたいと思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)