たとえば、その会社の今の株価が100ドルとします。ストックオプションが会社から与えられると、今から3年後の日から95ドルで株を買う権利が付与されるのです。3年後の株価が150ドルになっていれば、そのストックオプションを行使することで55ドルの利益が得られるというものです。

 ですから、ストックオプションをもらった社員は、会社の業績が3年目にむけて上昇していくように一生懸命働くようになるという、いわゆるインセンティブのスキームです。

企業のトップが
年収数十億円もらえる理由

 アメリカのどこそこの会社のCEOの年収が2700万ドル(約30億円)、3600万ドル(約40億円)という話が日本でも報道されますが、このうちの70~80%程度はストックオプションで支給されています。

 なぜアメリカの会社のCEOはこんなとんでもない金額を取ることができるのでしょうか。

 これについては、定説があるわけではありませんが、私はやはり株式インセンティブの利いた報酬体系が会社の活力を高め、それが大きな収益につながり、その結果として、CEOを始めとする上級社員の高給が実現できていると思います。

 会社の所有者である株主も自分の持っている株の価値が同じように上がっているので、CEOや上級職員が高い報酬をもらっても文句は言いません。

 では、株価を上げるためにどういう経営をしなければならないかというと、毎年利益を成長させる経営をしなければならなくなります。

 今年9億ドル(約990億円)稼いだら、来年は10億ドル(約1100億円)、再来年は11億ドル(約1200億円)稼がないと、いけないのです。なぜなら、理論的には、株価は将来の利益を10%程度の割引率で割り戻したものですので、将来の利益成長率が割引率を下回ってしまうと株価が暴落してしまうからです。

 その結果、どういう経営が行なわれるかを想像してみてください。

 優良企業で今年10億ドル(約1100億円)儲けた会社があったとします。CEOは年度替わりの年末に、たくさんの現金ボーナスとたくさんのストックオプションをもらいます。上級職員も同じです。