年が明けると、CEOを中心とする上級職員の一団は、その年の利益を成長させるため、まずはリストラに手をつけます。削れるコストは、徹底的に削ることが基本になります。中級職員、現場労働者の昇給は抑え、システム化や機械化が可能なところは、それを徹底的に進め、人を減らして効率化します。そのうえで、はじめて成長戦略を考えることができるのです。

 この成長戦略に貢献すべき人は上級職員ですが、いいアイデアを出すことができない人、アイデアがあっても実行力が伴わない人は、CEOにとってはお荷物以外のものではありません。お荷物を整理し、新たな血を入れることが行なわれます。

 経営戦略がうまく機能すれば、会社の業績は上がり、CEOと上級職員は、手厚い現金ボーナスとストックオプションで分け前にあずかります。

 こうした経営が続けられる結果、上級職員の報酬はどんどん上がり、会社の駒にすぎない中級職員、現場労働者の給与は低いまま据え置かれます。

 つまり、アメリカンドリームを実現できるのは、一握りの上級職員だけであり、中級職員と現場労働者は落ちこぼれていくのです。

社員も経営者も
「いつでも解雇される」世界

 では、アメリカの雇用は、どういう場合に終了するのでしょうか。

 アメリカでは、オファーレターにEmployment At Willと書かれています。これは、「任意に基づく雇用」と翻訳されます。その意味は、労働者も雇用者も、いつでも理由なく退職、解雇できる雇用であるということです。

 日本でも、労働者は理由なく退職することができますが、雇用者はそうはいきません。しかし、アメリカでは、雇用者も理由なく解雇することができるのです。

 たとえば、重要なクライアントを失ってしまった社員は解雇されても文句を言えません。クライアントを失わずとも、クライアントを怒らせてしまい、上司に苦情が入れば、即刻解雇ということも起こります。