この2つの例は理由のある場合ですが、理由がなくても解雇できるのですから、上司とそりが合わず、いつもたてついている社員は、気にくわないというだけで上司が解雇することもできるのです。

 アメリカの映画を見ていると、従業員が突然解雇され、段ボールに私物をまとめて会社を去っていくシーンが出てきますが、まさにあれがアメリカ企業の解雇です。

解雇の効力を
訴訟で争うケースも増加

 ただし、例外があります。

 第一が、Public Policy違反の場合です。たとえば、陪審員制度に労働者が従事するため欠席したことを理由に解雇することはできません。

 第二が、Implied Contract 違反です。口頭又は書面で長期雇用を保証した時に解雇できないとするものです。

 第三が、Implied Covenant of Good Faith and Fair Trade違反です。たとえば、セールスコミッションの支払対象者を、支払期限がこないうちにわざと解雇することはできないというものです。

 そして、最後にその他のException。人種、肌の色、宗教、性別、国籍等憲法で禁止されている雇用差別が理由になっている時に解雇できないというものです。

 このような例外が設けられているため、最近は解雇について、人種差別だ、宗教差別だと言って、労働者から解雇の効力を訴訟で争ってくるケースが増えています。

 しかし、それでも適切な手続きを踏んで解雇を行なえば、アメリカでは解雇は広く認められていますので、ジョブ・セキュリティーが低いという事実は変わりません。

 そのうえ、アメリカはジョブ型雇用ですから、そのジョブが事業の縮小等の戦略の転換により消失してしまうと、自動的にその人は解雇されることになります。この場合には、事業縮小という戦略的理由がありますから、差別だと言って訴えを起こすことはできません。