上級国民が唱える「バラマキ立国論」では、庶民の賃金が上がらないシンプルな理由写真はイメージです Photo:PIXTA

「バラマキ」で上級国民だけが潤う

「とにかく今の日本はケチケチしないでカネをバラまきゃいいんだよ! 政府支出が増えれば経済は成長するってことが分かってるんだから」

「その通り! 財政出動すればするほど、景気も良くなって自然と賃金も上がっていく! それを邪魔する財務省こそが日本のがんだ!」

 そんな激アツの論争が今、永田町で盛んに交わされている。財政健全化なんてみみっちい話は忘れて、じゃんじゃん金を刷ってバラまけばあっという間に景気が上向いて、日本は再び黄金時代を迎える…と、言うなれば「バラマキ立国論」が空前のブームとなっているのだ。

 きっかけは、昨年の自民党総裁選で「プライマリーバランス黒字化目標凍結」を掲げた、高市早苗政調会長である。昨年12月に財政政策検討本部を発足したことで、自民党内の「積極財政派」が一気に勢いづき、若手議員を中心に「責任ある積極財政を推進する議員連盟」も設立されている。

「バラマキ立国論」で唱えられている、日本復活シナリオは極めてシンプルだ。

 政府がケチケチしないで金をバラまけば、公共事業やらさまざまな分野で需要が増す。それに対応する企業は設備投資をするので、生産性も上がる。そうなると黙っていても従業員の賃金も上がっていく。消費も活発になるので商品やサービスも値上げができる。それを受けてさらに賃上げという好循環が生まれて、あれよあれよという間に、「デフレ脱却、日本経済奇跡の復活」を果たして「めでたし、めでたし」というワケだ。

 と聞くと、「なるほど! なんでこんな簡単な話に気づかなかったんだ!」と納得する方もいらっしゃるかもしれないが、残念ながらこのバラマキで潤うのは、ブームに熱狂している政治家をはじめほんのひと握りの「上級国民」の皆さんだけだ。われわれ一般庶民には、ほとんど恩恵はない。