“インクルージョン”が生まれやすい「あべのBDL」

 少子化によって、定員割れしていく私立大学もあり、大学の入学希望者総数が入学定員総数を下回る「大学全入時代」と言われるようになって久しい。進学についての選択肢が多い時代に、どこの、どの大学に行くか――就職を視野に入れて“ブランド力のある大学”を志す学生は多いが、言うまでもなく、「学校で何を得るか」が肝要だ。

 ビジネスデザイン学部の学生は、「あべのBDL」の見学に訪れた高校生に対して、なぜ、学部の目的と自分の学びについて説明できたのか……それは、「キャンパスで学べるカリキュラムを学部側が受験生にしっかり伝え、総合型選抜を中心にしたマッチング重視の入学試験を実施しているからではないか」と遠藤さんは推測する。結果、目的意識の高い学生がビジネスデザイン学部に集い、良い環境下で、実りある学習を得ているのだろう。

 今回、「オリイジン」は、「あべのBDL」を訪れ、ダイバーシティ&インクルージョンやリーダーシップ開発をテーマに研究・教育活動を行う酒井之子特任准教授に話を聞いた*4 。酒井特任准教授は、「あべのBDL」が「インクルージョンの生まれやすい場」だと明言する。

*4 「HRオンライン」インタビュー記事「なぜ、企業はダイバーシティ&インクルージョンを推進しているのか?」

 他者と接し、自分と異なる価値観を知る“インクルージョン”は「気づき」から生まれるものだ。学ぶ環境の最適解となるキャンパス(あべのBDL)は、学生と教職員、PBLを共にするビジネスパーソンの多様な交流を促し、絶え間ない「気づき」を与えているにちがいない。

 現在、ビジネスデザイン学部では1年生から3年生までの366人が学び、この4月に入学する新入生で4学年全員が揃う。

 遠藤さんに来年度のキャンパスに期待することを聞いた。

「学生たちが、学年の枠を超えてお互いに刺激し合ってほしいですね。ビジネスデザイン学部は“逆さまのカリキュラム”で、実践授業からスタートして、理論科目を習得する順で学びます。1年生は細かな理論を知らないまま、どちらかというと枠にとらわれない提案をしてきます。一方で、3・4年生になるとデータなどを分析したうえで、より緻密なプランを作成します。実際、3年生は外部のコンテスト入賞などの結果を残し、1年生が授業内で提案した内容は連携企業の方から採用したいとのお話をいただいています。それぞれの学年が交わることでシナジー効果が生まれることを期待しています」

 お互いの枠を超えての刺激――「あべのBDL」のパンフレットにもこう記されている。

「実際のビジネス現場を意識して、あえて多様で混じり合う雑然とした環境をつくり、設備で『社会』を実感できる空間にしています」

 2023年の4月には、ビジネスデザイン学部卒の第1期生が社会へと飛び立つ。ダイバーシティ&インクルージョンを会得した学生たちがビジネスの現場で起こしていくイノベーションに期待したい。

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。