長女が心配するのは、この収支状況だけではなく、貯蓄の減り具合です。60歳の時に一時金として受け取った退職金が約800万円あったはずなのに、今の貯金額は100万円を切るほどに減っていたのです。

 企業年金は60歳から15年間の受け取りで、収入はある程度あったはずです。それなのに貯金を取り崩している暮らしぶりに、私と同様「企業年金がなくなったり、母が働けなくなったりしたら、この先の生活は成り立たなくなる」と長女も感じていたようです。そして、その企業年金の受給期間はあと4年弱で終わりますし、母ももうすぐ70歳になるので、いつまで働けるか分からない。ここが、長女が家計相談のポイントにしたいと思っていた点でした。

過去にあった借金問題

 ご夫婦の家計事情に長女が関わるのには、過去のSさんの借金問題が関係していました。Sさんは現役時代(57歳頃)に借金を重ね、返済困難な状態となりました。

 役職定年による収入減と、生活レベルを落とせないこと、教育費がかかったことに加え、ご本人の浪費が原因だったようです。自分の教育費が親の借金を増やす原因の一つになったと考えた長女は、債務整理をせず、「二度と借金はしない」という約束のもと、弟とお金を出し合い、Sさんの借金を完済させました。ですが、借金がなくなっても生活の仕方は変えられず、少しお金がたまってはすぐに引き出すような暮らし方で、お金をためることは、その後もできずにいました。

 定年後は再雇用やパートで働き、企業年金も受け取っていたので、なんとか収入を維持できていましたが、ボーナスがない分、収入は減っています。生活費を補填する原資はないのに、困っている様子もない。退職金でなんとかなっているにしても、夫婦で70歳前後となるのにあまり変化がないということで、「貯金を食いつぶした」もしくは「また借金をしているのではないか」という疑念が生じ、今回の相談に至ったというわけです。