ウクライナでの自由民主主義の浸透の成果

 2014年のロシアによるクリミア半島併合後、ウクライナでは汚職防止や銀行セクター、公共調達、医療、警察などの制度改革が実施されてきた。そして、民主的な選挙が実施され、政権交代で3人の大統領が誕生した(仲野博文『プーチンを暴走させた「ウクライナ・ロシア・ベラルーシ」の8年間の変化とは』)。

 政権交代が頻繁にあり、ゼレンスキー大統領の支持率は約30%という状況をプーチン大統領は、ウクライナの政情が不安定と捉えていた。ロシアのような権威主義の国ならば、指導者への支持率は80%を超えたりする。ゼレンスキー大統領の権力基盤は脆弱だと判断した。

 だが、言論、報道、学問、思想信条の自由がある自由民主主義では、国民の考えは多様だ。野党が存在し、指導者への対立候補が多数存在するものだ。指導者の支持率が約30%というのは、低いわけではない。むしろ、ウクライナでの自由民主主義の浸透を示すものだ。自由民主主義を一度知った人々は、それを抑えようとするものに決して屈しない(第220回)。

 それが、自ら銃を取って民兵となったウクライナ国民だ。

 ロシア軍は約90万人(旧ソ連時代の5分の1の規模)で、ウクライナに展開しているのは15万~20万人だとされる。一方、キエフは人口約250万人の都市だ。徴兵制で、成人男性は皆、銃を扱える。彼らが民兵になれば、ロシア軍の数的不利は明らかだ。キエフの制圧は相当に困難だ。地上戦ではロシア軍は大苦戦し、士気が落ちているという。

 プーチン大統領の最大の誤算がここにある。