後悔しない認知症#8Photo:PIXTA

日本は“認知症社会”に突入した。認知症の行方不明者、高齢の万引犯が増え続けている。交通事故もしかりだ。認知症患者によるものと思われるごみ屋敷問題も後を絶たない。有病者が600万人を超えると推計されている認知症大国の日本。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#8では、認知症社会化がいっそう深刻化している現実を追う。(ライター 嶺 竜一)

認知症が進んだ1人暮らしの高齢者が
陥ったディオゲネス症候群

 精神医学の世界で「ディオゲネス症候群(老年期隠遁症候群)」という言葉がある。古代ギリシャの哲学者、ソクラテスの孫弟子の名前を冠した、老年期に観察される病態のことである。ごみ屋敷症候群ともいわれる。

 認知症が進行すると生活はどう変わっていくのか。それまでの生活習慣やルーティンとなっていた行動ができなくなる。片付け、掃除、ごみ出しができなくなって徐々に家が散らかっていき、次第に汚部屋化、ごみ屋敷化していく。さらにディオゲネス症候群の特徴が示すように、そのことを隠匿し、支援を拒み、社会的な孤立を深めていくという問題がある。

 悲惨な状態になったごみ屋敷は、ただ汚いだけでは済まず、健康や命に関わるリスクを引き起こす。汚部屋掃除や特殊清掃を専門に行う会社、まごのて代表取締役の佐々木久史氏は次のように話す。