後悔しない認知症#7Photo:PIXTA

認知症の診断には誤診という大問題が付きまとう。正しい診断が容易ではない、厄介な病気なのである。精神疾患など他の病気を認知症と決め付けたり、認知症の中でも種類を取り違えたりと、状態をみすみす悪化させたりするケースが後を絶たない。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#7では、患者の家族や介護現場に不幸をもたらす「誤診」の実情を追う。(ダイヤモンド編集部 小栗正嗣)

介護現場でも実感する誤診の続出
アルツハイマー型認知症の3割は誤診!?

 認知症診断には誤診という大問題が付きまとう。「正しい診断」を受けるのが簡単ではない。

 日本の高齢者の医療環境は恵まれている。地域で気楽にかかりつけ医や病院に相談し、受診できる。国民皆保険制度の下で、アクセスのしやすさは随一だ。

 だが、その陰で、国民病として多くの人に関わる認知症については、誤診多発という問題を抱えている。

『認知症診断の不都合な真実』を上梓した磯野浩・埼玉森林病院院長は、老年精神医学を専門にして臨床経験を重ね、また東京都の浴風会病院で認知症患者の脳の病理解剖診断も行った、認知症の専門家である。その磯野医師が言う。

「医療機関からの紹介で患者を改めて診察したところ、紹介状に書かれていた診断名と違っていたケースは2割くらいあった」

 地域の認知症診断・医療を担う疾患医療センターの医師も続いて言う。

「地域差がかなりあると聞くが、自分の経験では、紹介状に“○○認知症の疑い”と書かれた病名の1割から2割は間違っていた」

 公的介護保険の要介護認定に当たっては、主治医が申請者の病気の状況について意見を記し、それを基に要介護度が判定される。そうした審査・判定を公平、公正に行う介護認定審査会の審査員経験者は、次のようにきっぱりと言い切る。

「認知症の高齢者、特にアルツハイマー型認知症という診断の3割くらいは誤診だというふうに現場は認識している」

 また、首都圏の介護施設の経営者はこう言って苦笑する。

「内科のかかりつけのドクターは、残念ながら認知症のことをよく知らない」

 認知症の診断の現場では、実はこうした誤診以上にお粗末な現実がある。