現役世代は、田舎に住んでいる認知症の親と同居は難しい。しかし、日々の食事、何より火の不始末など心配事は尽きない……。だが、最近では自分の生活をなるべくキープしながら、離れていても親の状態を確認できる便利なアイテムが多く販売されている。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#14では離れて住む認知症の母を介護する男性ライターが、リモート介護の極意を伝授する(ライター/岡野 学、構成/ダイヤモンド編集部 野村聖子)
実家に帰るのは1カ月に1回!
リモート認知症介護をかなえる便利グッズ
現役世代で、親と同居している人はもはや少数派だろう。実際に、厚生労働省の最新の調査では高齢者世帯の6割超が独居か夫婦のみ(下図参照)。
離れて暮らす親が認知症になっても、今更同居は難しい。でも別居しながら認知症介護なんて可能なのか。自身も75歳のアルツハイマー型認知症の母(要介護1)を介護中で、家電やガジェットに詳しいライターの岡野学氏は「文明の利器を使い倒せば、認知症でも“リモート介護”はできる」と太鼓判を押す。
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母の認知症を疑ったのは2016年。まだ70代に入ったばかりで、当時デイサービスのヘルパーをしていたのだが、ある日母から「物忘れが増えてきたから病院に行った」と連絡を受けた。結果を聞くと「大丈夫」と言うので放置してしまったが、後から母の職場の人に聞いた話では、実は母が職場で利用者さんを殴ってしまったのに、翌日すっかり忘れていたため、上司が病院を受診するよう勧めたのだそうだ。
勤務先も介護事業という仕事上大目に見てくれていたが、約1年後に今度は「ものを盗られた」とスタッフを疑うのだと連絡があった。さすがにこのまま働かせるわけにはいかず、退職させることになった。兄が母と同居しているが、障害があり頼れない。
そこで自分が母の介護を引き受けることになったものの、同居は微塵も考えられない。同居したら一日中同じ話を繰り返しされ、物盗られ妄想にも付き合うことになり、仕事にならないことは目に見えていたからだ。
実家までは徒歩20分だが、帰るのは1カ月に1回ほど。何とかこれまでの距離を保ちなから、ラクして介護する方法はないかと模索していたところ思い付いたのが、自分の専門分野である家電やガジェットを使ったリモート介護。これまでさまざまなものを試してみた中から本当に良かったものを、エピソードを交えながら解説していこう。