「2分以内」の動画が、なぜ、効果的なのか…

 自社の紹介動画や商品のプロモーション動画において、「自分たちや商品のことを徹底的に知ってほしい」と考える企業も多いようだ。しかし、中村さんはその姿勢に賛同しない。

中村 会社や商品を動画で知る人の「第一印象」が大切です。だから、動画の制作者は、商品に対して、視聴者同様の「初めての目線」を持っている必要があります。動画によってどういう印象がもたらされるか――最初から深いレベルで商品を理解してほしいなら、動画ではなく、紙メディアのほうがよいでしょう。動画は商品を知るためのきっかけや導入ツールくらいに考えたほうが多くの人に受け入れられます。

 動画はたくさんの情報を視聴者に与えることができ、紙幅(文字量)といった制限とも無縁のため、商品プロモーションの動画などはいたずらに長いものも散見される。そうしたなか、「2分以内が効果的」と公言する中村さんに、「2分間」の意味を聞いた。

中村 当社が創業した頃は、動画のシナリオをクライアントにご用意いただくこともありましたが、たいていが長いものでした。会社や商品のプロモーション動画を創るとなると、「説明」がつい長くなりがちです。たとえば、当社ヒューマンセントリックス自体の紹介動画をパソコンで見ていただく場合、視聴される方の我慢できる時間を考えると、「2分間」が適当です。あくまでも私の感覚ですが、1分だと短く、3分だと長い。「2分間」を意識して周りを見たら、朝日新聞の「天声人語」が550文字から600文字、日本経済新聞の「春秋」も550文字前後で、私のしゃべりのスピードなら、ちょうど2分間で読み終わることが分かりました。「天声人語」も「春秋」も文章の中に起承転結がありますよね。会社紹介→商品の特長説明→視聴者へのメッセージという起承転結も2分でできます。そして、短い動画であることを画面であらかじめ伝え、「この動画のために、お時間を2分いただけませんか?」というコンセンサスを得ることも大切です。

 カップ麺の調理時間や「3分クッキング」のように、「3分=短い」というイメージがありますが、オンライン配信のプロモーション動画は2分が妥当――それが、18年間、私が動画制作を続けてきたうえでの答えです。どんな商品でも、どんな会社でも、2分間の動画で説明でき、たとえば、「ヒューマンセントリックスって何の会社ですか?」と聞かれたときは、その本質をたった10秒で伝えられます。「BtoB企業向けの動画と配信の会社で、お客様の課題を解決する。それがヒューマンセントリックスです」――結果、「BtoB企業向け」「動画と配信」「課題解決」というキーワードがお客様の頭の中に残るのです。